先週末の米国市場でダウ平均をはじめ主要株価指数はそろって史上最高値を更新した。金融株など景気敏感株を中心に買いが先行した。このところ米国株が少し軟調となると、日本株は過剰反応して米株以上に下がる。しかし、米国株が反発すると慌てて買い戻されるといった間抜けな展開が再三続いてきたが、今回もこのパターンだろう。

東京都に4度目となる新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が適用される。過去のパターンでは、政府が緊急事態宣言の発出を決めるタイミングはたいてい感染拡大がピークに達する頃で、緊急事態宣言の発出はむしろ相場のアク抜けにつながってきた。

ちょうどこのタイミングで需給も軽くなる。前週末に集中したETFの決算日に伴う分配金捻出の換金売りというイベントを通過した。昨年のイベント明けには日経平均は大幅反発して、前の週の下げを一気に取り戻したことは先週書いた通りだ。

今週最大の見どころは、先週末発表された安川電機(6506)の決算に市場がどのような反応を見せるかだ。安川電機の21年3~5月期の決算は利益が昨年比で倍増し、売上高ともに市場予想を上回った。同期間の受注も過去最高を更新した。2022年2月期(通期)の売上高、利益も大幅に上方修正した。この決算を市場が評価しなければ、相場は相当「重症」である。月曜の寄り付きは9分9厘、間違いなく買い気配でくると思うが問題はその持続力だ。これで安川が崩れなければ、その後続く3月決算銘柄の決算に明るい希望が持てる。相場が立ち直るきっかけになるだろう。

決算絡みで言えば、3-5月期決算発表も終盤戦。指数寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)に注目か。海外では15日に台湾のTSMCの決算があり、半導体関連株に影響がありそうだ。また米国では4-6月期決算発表が始まり、今週はJPモルガン・チェースやゴールドマンサックスなど金融の決算が相次ぐ。

金融政策面ではパウエルFRB議長の半期に一度のハンフリー・ホーキンス・テストモニーがある。14日に下院金融委員会、15日に上院銀行委員会でそれぞれ議会証言するが、おそらく型通りのことしか言わないだろう。事前に提出されたハンフリー・ホーキンス報告書では「短期的なインフレ見通しのアップサイドリスクが増した」とインフレリスクを警戒する文言を盛り込んだものの、供給制約が薄れるとともに物価上昇は落ち着くとの従来の見解を強調した。日本では日銀が15、16日に金融政策決定会合を開くが、政策変更はなく現状維持で材料にならない。

注目の経済指標は中国で15日に4-6月期GDPと6月の鉱工業生産、小売売上高など主要指標が発表される。米国でも13日に6月消費者物価指数、14日に地区連銀経済報告(ベージュブック)、15日に7月ニューヨーク連銀製造業景気指数、7月フィラデルフィア連銀景気指数、6月鉱工業生産、16日に6月小売売上高と主要景気指標の発表が目白押しとなる。

懸念材料は政治リスク。オリンピック期間の感染状況によっては衆院選での自民党苦戦、菅政権の退陣シナリオも浮上しかねない。一方で、都議選の苦戦を受けて菅政権が今夏にも大規模な経済対策を打ち出すとの観測がある。自民党の安倍晋三前首相は11日、北海道苫小牧市で講演し、秋までにある次期衆院選への危機感を強調した。「政府と日銀の連合軍で、思い切った対策を打てる状況にある」との発言が報道されている。状況次第では政策期待が一段と高まり、それが相場の追い風にもなるだろう。