みなさん、こんにちは。日経平均はもみ合いが続いています。一度、インフレ懸念から急落という局面もありましたが、すぐに値を戻してきました。種々の懸念材料はあるものの、やはり相場の腰は強いというところなのでしょう。

日本でのワクチン接種も加速し始めており、感染者数が増加しても重傷者、死亡者数の抑制が鮮明になってくればかなり雰囲気も変わってくるのではないでしょうか。紆余曲折はありましたが、2021年に開催されることになった東京オリンピック・パラリンピック競技大会はやはりテンションも上がります。引続き、今後1-2ヶ月間は、(後から振り返ると)このコロナ禍における大きな転換点になるとの見方を継続したいと私は考えています。

ジェフ・ベゾス氏、宇宙旅行を計画

さて、今回は「宇宙産業」をテーマに取り上げましょう。6月上旬、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は自身が設立した宇宙開発ベンチャー企業のロケットに7月にも搭乗する計画であることを発表しました。打ち上げてから大気圏外となる宇宙空間に到達して地表に戻ってくるまでの10分強という短い時間ながら、無重力状態を経験するという計画です。

2018年にはZOZOTOWN創業者で現在スタートトゥデイ社長である前澤友作氏がイーロン・マスク氏の開発するロケットに搭乗して月に自身が行く構想を発表しており、前澤氏は2021月12月には国際宇宙ステーション(ISS)に向かう計画であることを明らかにしています。

実業家の堀江貴文氏も自身で宇宙ロケット開発会社を立ち上げ、2019年には無人ながらも国内民間単独では初の宇宙空間到達を実現しています。有人宇宙飛行はスペースシャトル計画の終了(2011年)によりしばらく停滞していましたが、ここにきて民間資本が軸となって再び歯車が回り始めてきたと言えるのではないでしょうか。

宇宙産業はそもそも大きな可能性を秘めたものでした。ベゾス氏の宇宙行きを契機に、ビジネスとしての宇宙という視点が現実へと更に一歩進むことになります。これを受けて株式市場でも今後は折に触れて注目されてくるセクターになるのでは、と期待しています。

宇宙産業で注目すべき分野と課題

では、宇宙飛行の一般化が進めば、株式市場ではどういった産業が注目されることになるのでしょうか。まず考えつくのは、宇宙への旅行産業でしょう。

ベゾス氏に限らず、宇宙に行ってみたいと考える人は決して少なくないはずです。かくいう私も、機会(とお金)があれば是非とも行ってみたいと思う一人です。そして、宇宙ロケットに使用される精密かつ高機能な部品・部材メーカーという連想も出てくると考えます。

しかし、残念ながら、これらはストーリーとしては興味深いものの、当面「お話」の段階にとどまるものと予想します。一般人が宇宙へ向かうにはまだまだ安心・安全面でクリアしなければならない問題が山積しており、しばらくは過酷な訓練を受けた人のみがそのチャンスに浴するという程度にとどまることでしょう。

精密部品・部材も、確かに技術面での進化には繋がるでしょうが、航空機に迫るほどの量のロケットが継続的に生産されない限り、ロケット向け部品・部材で「業績が経常的に成長する」というのは難しいと思います。これら連想しやすい産業が本格的に株式市場から注目されてくるのは、おそらくもっと後の段階になるのではないでしょうか。

産業として成立するまでに時間がかかることを前提とすれば、私はむしろ製造業に注目します。宇宙空間に製造過程を移すことができれば、生産効率を抜本的に改善できる可能性があるためです。

例えば、空気に触れることがなくなることから、化学反応面において、また摩擦面において、あるいは異物混入リスク面においてメリットが発生します。無重力であることからハンドリングも容易となり、雨や曇りといった気象条件の制約がないことから、かなり安定した太陽光によるエネルギー供給も見込まれることでしょう。そして、これは地表における温室効果ガスの削減にも繋がるでしょう。

実際のところ、製造段階で真空条件が要求されたり、わずかな塵さえも排除したりしなければならないという素材や部材は少なからずあり、「宇宙空間で製造できるものならしたい」と考える企業はかなりの数に上るはずです。

一度生産拠点を作ってしまえば、遠隔操作で一般人が宇宙空間に実際に行く必要もありませんし、ロケットによる往復も定期便程度に抑制できると考えられます。劇的な製品品質の改善や大幅な生産コスト削減を期待し、宇宙空間での製造を考える企業も出てくるのではと期待するのです。

とはいえ、宇宙空間に製造設備を設置し、それを安定的に操業させ、製品を無事に地表に運ぶという新たなコストももちろん発生します。上記のメリットがこのコスト上昇を上回らなければ、どの企業も宇宙空間での製造に踏み切ることはないでしょう。

やはり相応の時間と試行錯誤は必要です。しかし、「ロケット開発が加速すれば宇宙旅行」といった単純なシナリオだけではおさまらない、ということもまた確かなのです。こういった見方も頭の隅に留めておいていただければ、何かしら投資の参考になるのではないかと考えます。