年初来高値に近付くユーロ/米ドル

ユーロ高・米ドル安が進み、1月に記録したユーロ高値・米ドル安値の1.23米ドル台半ばに接近してきている。ただし、そんなユーロ高・米ドル安は、独米金利差から見るとちょっと「先走り過ぎ」の懸念があった(図表1参照)。

【図表1】ユーロ/米ドルと独米金利差 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

独米金利差ユーロ劣位も最近にかけて縮小してきたが、それでも1月にユーロ/米ドルが1.23米ドル台半ばまで上昇した頃に比べると差がある。この数ヶ月のユーロ/米ドルと独米金利差の関係からすると、金利差が正当化できるユーロ/米ドルの水準は基本的には1.2米ドル程度だろう。

そんなユーロ/米ドルの水準を、4月頃から正当化するようになったのは、金利差ではなく独金利だ(図表2参照)。興味深いのは、ユーロ/米ドルと独金利の間には、3月頃まではほとんど関係性は見出せなかった。ところが、3月を過ぎた頃から両者の関係性は強まり、そして5月に入ってから、上述のように独米金利差からかい離したユーロ高・米ドル安の動きは、むしろ独金利上昇でうまく説明できそうだ。

【図表2】ユーロ/米ドルと独金利 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これは確かに、ユーロ/米ドルと金利及び金利差との相関係数で見ても確認できる。相関係数は、プラス1に近付けば両者がほぼ同じように動いている、そしてマイナス1に近付けば両者がほぼ逆に動いているといった意味になる。

そんな相関係数を見ると、ユーロ/米ドルは4月までは米金利が主役の独米金利差と同じように動いていたものの、5月に入ると米金利との相関係数が急低下となり、むしろ独金利主役の独米金利差と同じような動きに変わっていた(図表3参照)。

【図表3】ユーロ/米ドルと金利の相関係数 (2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

これは、一般的に言われるように、最近にかけてのユーロ高は、欧州におけるコロナ後の経済正常化などを好感したユーロ買いの影響が大きいといった指摘と確かに一致するかもしれない。もう1つの背景としては、4月にかけて急騰した米金利が、最近は方向感を欠いた展開になっている影響もありそうだ。

以上で見たように、最近のユーロ高・米ドル安においては、米金利低下を受けた米ドル売りより欧州の金利上昇を受けたユーロ買いの影響が大きいということなら、ユーロ高・米ドル安に比べて米ドル安・円高の動きが鈍いこととも、一応辻褄が合うとは言えそうだ。