まもなく新社会人の方も初の「給料日」を迎えます。給料は、入社時に提示された基本給が、そのまま手元に入るわけではありません。税金や社会保険料が天引きされ、残った金額が手元に入ってきます。

この手元に入ってくる金額が新社会人の生活費になるわけですから、どのような内訳で、何のために給料から諸金額が引かれているのかを知っておいていただきたいもの。新社会人になったお子さんがいるという方は、ぜひ給料明細書を一緒に見ながら教えてあげてください。意外とその理由を知らず、「なぜ給料が減っているのか」と思う新社会人もいるのです。

給料で支払われるもの、控除されるもの

給料は基本給と残業があれば時間外手当(残業代)を基本とし、住居手当や家族手当、資格手当や交通費といった会社で準備している手当などが含まれます。支給されるものを合算した金額が「総支給額」で、「額面」などと言われることもあります。

この中から、社会生活を送るために必要な支払いをします。健康保険料、年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税です。他に社内預金、財形貯蓄、労働組合費、会社で扱う団体保険の保険料など、自分の判断で引かれる金額もあります。これらは「控除」という扱いとなり、給与明細書の中では全ての控除額を合わせ「控除額合計」などと書かれています。

この総支給額から控除額合計を引いた金額が、「手取り」として口座振込などで支給されます。これが生活費の元になる収入です。

控除はなぜされるのか?控除の内容を知る

では、控除はなぜされるのでしょうか。総支給額から必ず控除されるのは、社会保険料と税金です。社会保険料の分類としては主に3つあり、健康保険料、年金保険料、雇用保険料になります。40歳になると介護保険料も加わります。それぞれに生活を守る目的があります。

健康保険料

医療費の負担軽減を目的としたもので、公的な医療保険となります。病院受診時の医療費負担を一般的に3割などに抑えるほか、1ヶ月の医療費負担が一定以上かからなくする「高額療養費制度」、病気やケガによる休業中の収入を保障する「傷病手当金」の支給、出産時の手当金の支給などの給付が受けられます。総支給額から出される「標準報酬月額」の9.87%(東京都の場合)を会社と折半して支払うので、自己負担は5%弱となります。

年金保険料

国民年金部分を含んだ厚生年金の掛け金のことです。老後の「老齢年金」だけではなく、一定の障害を持った場合に受けられる「障害年金」、万が一自分が死亡した際に家族の生活を保障する「遺族年金」のもとになります。年金を受給するときは「基礎年金」と「厚生年金」の2つを受給できます。月々支払う金額は「標準報酬月額」の18.3%です。会社と折半なので、自己負担は9.15%になります。

雇用保険

失業時の「失業給付」を受けるための掛け金です。育児休業手当などもここから給付されます。毎月の給料の0.3%~0.4%が自己負担額になります。この自己負担率は業種により変わります。会社は従業員とは別に0.6~0.8%を負担しています。

この3つが主な社会保険料の内訳です。この社会保険料を給料の総支給額から引いた金額に税金がかかります。

所得税

毎月の給料にかかります。割合は収入により異なりますが、5%、10%、20%と収入が上がるとともに支払う割合も高くなります。いわゆる累進課税制度というものです。払い過ぎになることもありますが、年末調整で精算できます。

住民税

前年の収入に対して課せられる税金で、住民票のある自治体に納めます。毎年6月から前年分にかかる税の徴収が始まります。新社会人は住民税の計算の元になる収入が前年にないため、住民税は徴収されません。2年目から引かれます。

以上が必ず引かれるものです。これで、最低限の保障が受けられていることが分かりますね。

新社会人4月の初任給はどうなる?

社会人になり初の給料はどうなるでしょうか。まず、収入については、勤務開始日から給与計算の締め日までの日割り計算となります。中には翌月払いのため4月は給料なしという方もいるでしょうが、4月に支給される方の場合、前述した控除される金額はもらえないということです。

ただ、控除される金額も通常とは異なります。健康保険料、年金保険料は月末まで在籍した方を対象に発生します。ですからまだ月末まで勤務をしていない新社会人にあっては、4月分の徴収はありません。住民税も前述のように2年目からしか徴収されませんから、4月の給料からは雇用保険料と所得税だけが徴収されることになります。5月からは住民税以外の控除がされていきます。

給料の支給額と手取り額が違うのは、このような仕組みになっているからです。

収入について理解ができたら、生活費のかけ方などを計画して、20代前半の今から、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などの積立投資を始めると、とても良いですね。

これから先、40年以上積立投資ができると、貯金では作ることができないような資産を作ることができます。自分の人生に責任が持てるよう、準備をしていきましょう。