高値警戒域に接近するメキシコペソと南アフリカランド

メキシコペソや南アフリカランドといった新興国通貨が、対円相場で5年MA(移動平均線)近くまで上昇してきた(図表1参照)。新興国通貨は、基本的にリスク資産と位置付けられるため、米国の株価指数が最高値を更新するなど、リスクオン局面が続いていることが主因だろう。

【図表1】メキシコペソ/円と5年MA(2006年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

新興国通貨/円は、経験的に5年MA以上の水準が「上がり過ぎ」警戒域だった。これは、5年MAからのかい離率で見るとわかりやすいだろう。メキシコペソ/円こそ、2013~2015年にかけて5年MAを比較的長く上回ったことがあったものの、基本的には5年MA以下での推移が多かった(図表2参照)。南アフリカランド/円になると、2010年以降では5年MAがほぼ上限となってきた(図表3参照)。

【図表2】メキシコペソ/円の5年MAからのかい離率 (2006年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表3】南アフリカランド/円の5年MAからのかい離率 (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

新興国の経済ではインフレが問題になっているケースが多い。インフレとはモノの価値が上がることであり、相対的に通貨価値は下がる。この結果、インフレ通貨でもある新興国通貨は、中長期的に通貨価値が下落するため、過去5年の平均値である5年MAを大きく超えられずに続落してきたということではないか。

そんな5年MAは、足元でメキシコペソ/円は5.5円、南アフリカランド/円は7.6円程度。株高、リスクオンの動きを見ながら、新興国通貨高は重大な岐路を迎えている可能性があるのではないか。

これらと対照的に安値圏での推移が続いている新興国通貨がトルコリラ。3月の突然の中央銀行総裁解任で大暴落となって以降、13円半ば近辺での推移が中心となっている。ちなみに、トルコリラ/円の52週MAは足元で14円半ばなので、それを6%以上といった具合に比較的大きく下回っている(図表4参照)。

【図表4】トルコリラ/円と52週MA (2014年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

経験的に、52週MAを大きく、長く下回る動きは一時的ではなく、継続的なトレンドが展開している可能性が高いといった意味になる。このまま、4月末にかけて52週MAを回復することができないようなら、トルコリラ/円は下落トレンドを展開している可能性が高まるため、昨年11月に記録した12円の最安値更新のリスクが高まる。

トルコでは15日に中央銀行総裁交代後初めての金融政策会合が予定されているが、前任者の金融引き締め方針の変更などに注目が高まりそうだ。