みなさん、こんにちは。相場はジェットコースターのような値動きの激しい展開になってきました。2月半ばに日経平均株価が約30年半ぶりに3万円を超えたかと思えば、月末には1日で1,200円も下落するなど、かなりバタバタしている感が否めません。

筆者は、この急落の背景にある世界的な金利上昇に対して、やや懸念が否めません。過剰流動性という状況に変化はありませんが、政府の低金利政策継続の姿勢に躊躇が見られれば、現状の微妙なバランスが一気に崩壊するような状況にもなりかねないと考えているためです。

本コラムで繰り返し述べている通り、「宴にはしっかり参加するべき。しかし、最後まで宴に残ってはいけない」ということを忘れないでください。

さて、今回は「AI(人工知能)」をテーマに採り上げてみましょう。実はこのテーマは2016年春にも一度取り上げています。

ただし、当時は自動掃除ロボットなどを通じてAIが普及しつつあったものの、ある意味まだ「おとぎ話」の段階にあり、AIの示す未来もぼんやりとした状況でした。そのため、当時のコラムでは「AIの進化によって10~20年後には49%の仕事が失われる」という予測に焦点を絞って解説を試みました。

あれから5年が経ち、AI技術は日進月歩となりました。AIは今や様々なシーンで利活用されるようになり、AIがもたらす社会構造の変化もかなり見えてくるようになりました。そこで再度このテーマに注目し、今回はよりダイレクトにAIを軸とした投資の考え方について言及してみたいと思います。

広がるAIの活用領域

現在、AIは既にかなり広範囲で利活用されています。

前述の自動掃除ロボットはわかりやすい例ですが、自動車の自動運転システム、交通管理システム、チャットボットなどの顧客対応システム、手書き文字の自動入力化などによる業務効率化システムがあります。また、その他にもフィンテック技術、監視や老朽化診断などのメンテナンスシステム、新薬や新素材の開発システム、医療診断システム、IoTシステムや、さらにはAIスピーカー、個別学習プランの作成システムなど、その活用領域は枚挙に暇がありません。

利活用領域のほとんどは一般消費者の目に触れない分野となりますが、AIはもはや「おとぎ話」ではなく、重要な「戦力」として社会に貢献しているのです。株式市場においてAIが息の長いテーマとなっているのも、このような「リアルさ」を伴っていることが大きく影響しているのではないかと筆者は考えています。

AIの先行き、今後の展開は?

ただし、肝に銘じておかなければならないのは、AIシステムを提供する企業を除けば、AIそのものは最終製品・サービスを構築するための手段であるという事実です。なんとなくAIと言えば何か万能な機能のように思ってしまいがちですが、少なくとも現時点では自動学習したAIを使って提供される「何か」がなければ、持続的なビジネスが成立しないのです。

AIそのものは超ハイテク技術ですが、これを実際に「役立てる何か」がなければ無用の長物になってしまうのです。これは、製造業で見た際の工作機械や産業機械、ロボットといったBtoBビジネスと同じ位置づけと言えるでしょう。とすれば、AIの先行きを考えるうえでは、産業機械などの状況が参考になるかもしれません。

現在、産業機械の専業メーカーは少なくありませんが、二極化が進んでいることも確かです。1つは特殊な分野・機能において世界的に高いシェアを有する企業群であり、もう1つは汎用的な分野に立脚する企業群です。

そして、先端ユーザーの中には「産業機械メーカーに頼らず、生産ノウハウの固まりである重要な機械は自社で開発する」というケースも少なからず存在しています。AIも「手段」である以上、今後はこのような展開になっていく可能性は小さくないと筆者は想像しています。

AI関連サービス企業への株式投資を考えるうえでも、機械株がそうであるように、特定の分野・領域に特化した企業がその主役を担ってくるのではないかと考えています。一方、そのような特色のないAIソリューション企業は、多くのライバル企業やユーザーの自社開発AIとの競合が予想され、それが収益力の重石となるリスクが増してくるとの懸念もあります。

AI銘柄選別にはまだ少し早い

もちろん、現時点ではまだまだ黎明期の範疇にあり、用途の拡がりが今後さらに加速すると考えれば、このような見極めのタイミングにはまだ早いのかもしれません。

実際、現在はまだAIに限らず、DX(デジタルトランスフォーメーション)などのキーワードはかなり抽象的なイメージ先行で投資対象が物色されている段階にあります。これらがファンダメンタルズに応じた評価となるにはまだ少し時間が必要でしょう。

しかし、2000年頃にインターネットなどのIT関連が一大相場を展開した際でも、市場の拡大が続く中、数年も経たないうちに銘柄選別は容赦なく進み、明暗がはっきりと分かれました。時間がかかると言っても、それほど遠い未来の話ではないでしょう。

前回AIをコラムのテーマとして採り上げてから既に5年経っています。もし5年後に同じくAIをテーマに採り上げることがあれば、きっとより明確な銘柄選別をお伝えする内容になっているのではないでしょうか。

まだまだイメージ先行の展開局面にはありますが、そのような局面だからこそ、銘柄選別の準備(銘柄別研究)をしっかり始めておく好機であると思います。