新興国通貨買いは続くのか?
新興国通貨の上昇が続いている。とくに、南アフリカランド/円は、2020年2月以来、ほぼ1年ぶりの高値である7.3円まで上昇してきた(図表1参照)。また、メキシコペソ/円も、この間の高値圏である5.2~5.3円程度での推移が続いている(図表2参照)。
主因はやはり、世界的な株高、リスクオンの中で、基本的にリスク資産と位置付けられる新興国通貨が選好されているということだろう。ただし、過去の実績を参考にすると、かなり中長期的な高値警戒域に近付いてきた可能性がある点は気になるところではないか。
新興国通貨は、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)以下の範囲で推移するのが基本だった。これは、とくに南アフリカランド/円の場合はわかりやすかった。2010年以降で見ると、南アフリカランド/円は、5年MAを上限、それを3割下回った水準を下限とした範囲での上下動が続いてきた(図表3参照)。
そんな南アフリカランド/円の5年MAは、足元で7.6円。これまで見てきたことからすると、南アフリカランド/円は7.6円前後が上昇の限界圏の可能性があり、それに接近してきたということは、高値への警戒を強める必要があるのではないか。
メキシコペソ/円は、一時的に5年MAを大きく上回ったこともあったが、基本的には南アフリカランド/円と同様に、5年MAが上限、それを3割下回った水準が下限といった範囲を中心に推移してきた(図表4参照)。メキシコペソ/円の5年MAは、足元で5.5円程度。その意味では、こちらも、かなり中長期的な高値警戒域に近付いている可能性がある。
新興国通貨が、基本的に長期の移動平均である5年MAを大きく超えられない展開が続いてきたというのは、基本的にインフレ通貨である新興国通貨の場合、先進国通貨以上に中長期的に通貨価値が下落しやすいということがあるだろう。その意味では、先進国通貨以上に、中長期的な高値警戒域に近付いてきた可能性のある最近の動きは要注意ではないか。