米ドル/円の「上放れ」

先週の米ドル/円は、104円を超えると一段高に向かい、一時105円に迫る動きとなりました(図表1参照)。ところでこの動きは、テクニカルに見ると重要な変化の可能性があります。

【図表1】米ドル/円の推移(2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

このレポートではこれまで何度も述べてきたように、昨年6月以降すでに半年以上も、米ドル/円は90日MA(移動平均線)を超えられない状況が続いてきました(図表2参照)。そんな90日MAは、足元では104円半ばなので、先週の動きこそは、半年以上続いてきたレンジ相場を上放れした可能性があるものだったわけです。

【図表2】米ドル/円の90日MAからのかい離率(2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

テクニカルで見ると、半年も続いたレンジ相場の上放れはそれまで溜まったエネルギーの発散ということから、しばらく相場は一方向へ動きやすくなります。その意味では、このレンジ「上放れ」が「ダマシ」でなければ、目先は米ドル高・円安が一段と進む可能性が高いでしょう。

「株安・米ドル高」は続くのか?

それにしても、なぜ長く続いたレンジ相場のブレークが米ドル高方向となったのか。それは、先週拡大した株安が一因でしょう。

昨年3月、「コロナ・ショック」の世界的な株大暴落が一段落した後からは、米国の株高トレンドの中で緩やかな米ドル安・円高が続いてきました(図表3参照)。株高・米ドル安という状況が、先週は反対の株安・米ドル高になったわけですが、米ドル「売られ過ぎ」の反動が入りやすくなっていたということではないかと考えます。上述のように、「コロナ後」の株高・米ドル安が長く続く中で米ドル売りが拡大、米ドルは「売られ過ぎ」懸念が拡大していました(図表4参照)。こういったことから、米ドル買い戻しに反応しやすい状況になっていたということではないでしょうか。

米ドル/円とNYダウ(軸反転)の関係(2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表4】CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

 

米ドル「売られ過ぎ」で、買い戻しが入りやすい状況、その中でテクニカルにレンジを米ドル「上放れ」したとなると、目先的に米ドル/円は上昇余地を試す展開が続く可能性が高そうです。ただし、そこで気になるのが、株安の動きです。

株安拡大、円安から円高へ転換!?

先週は、米国株も何度か急落する場面がありました。そんな株安は、上述のように米ドル高・円安を後押しした可能性があったわけですが、NYダウが1割以上大幅安となった昨年6、10月などの局面では、米ドル/円は下落となりました(図表5参照)。

【図表5】米ドル/円とNYダウ(軸反転) (2020年4月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上のように見ると、株安が拡大、本格化する場合、昨年の経験を参考にすると米ドル/円は上昇から下落へ転換する可能性も考えられます。株安の本格化、たとえばNYダウがこの間の高値31,000ドルから1割以上の下落になるなら、28,000ドル割れに向かう計算になりますが、果たしてそんな可能性があるのかは注視していきたいところです。

それにしても、なぜ先週、株価は急落となったのか。昨年11月の米大統領選挙の後から、ほぼ一本調子で上昇、いわば「無敵の株高」は、なぜ先週急落となったのか。これを考察する上で、株と同じく一本調子の上昇をみせていたが、株よりも先に急落、暴落に転じた暗号資産、ビットコンイン(BTC)に視点を移します。

昨年12月、約3年ぶりに高値を更新、20,000ドルの大台を突破したBTCは、あっという間に一気に40,000ドルも突破しましたが、その後年明けから一転して30,000ドルまで暴落となりました。

こんなふうに、BTCが暴落に急転したのは上述のように3年前にもありました。当時は、BTC暴落が拡大する中で、結果的にはそれを後追いする形で株も下落へ急転換しました。BTC下落がこの先も続くなら、株安の行方、そして米ドル/円への影響を考える上でも注目したいところです。

BTC下落は、この先どうなるか?それを考えるために、3年前のBTC暴落と今回の値動きを重ねてみたところ、これまで、両者のプライスパターンはとても似ていました(図表6参照)。ここまで似てきたので、この先も似た動きが続くなら、BTCは一段の下落に向かうといった見通しになります。

【図表6】BTC暴落相場の類似性
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

さて、強い上昇をみせた暗号資産が暴落すると、これまでのところ強い上昇をみせた米国株も急落となりました。3年前、代表的な暗号資産であるBTCの暴落が拡大する中で、それに追随するように米国株も下落が本格化、するとそれに連れる形で米ドル/円も急落に向かいました。

以上をまとめると、一旦米国株安(リスクオフ)で米ドル/円は上昇に向かうものの、米国株安が拡大に向かうようなら、昨年のように米ドル/円は下落に転換する可能性もある、それこそが2月の為替予想における最大の焦点になるのではないでしょうか。