国内外で新型コロナウイルスが引き続き猛威を振るっています。国内では新規感染者数が急増し、1都3県に緊急事態宣言が再発令されるという報道が出ています。このような状況下で年末年始の雰囲気が乏しい中、2021年が始まりました。

2021年も注目されるアクティビストの動き

年始のメディアの記事に目を通してみると、2021年はアクティビスト関係の報道が目立つように思います。例えば、年初の週刊東洋経済は「「村上ファンドがやってきた」物言う株主に怯えるゼネコン」と題し、4ページにわたるスペシャルリポートを掲載しています。記事によると、村上ファンドに限らず外資系ファンドを含め、アクティビストと呼ばれるような会社側に積極的に発言する投資家が、国内建設会社の株式を買い進めているとのことです。建設業界の動きや各社のデータなどが非常にまとまっており、読み応えのある内容です。本連載でも2020年に「アクティビストが狙う建設会社」と題した、同様の記事を掲載しています。

アクティビストがインテルに投資を開始

その他にも年末年始にかけてアクティビスト関連の記事が多く見られました。そうした中、特に注目される動きが米国で起きています。世界でも代表的なアクティビストである米ヘッジファンドの「サード・ポイント」が米半導体大手インテル(INTC)に投資を開始したのです。

ご存じの通り、インテルは半導体業界で圧倒的な地位を築き、いまだに業界トップの売上高を誇っています。しかし、最近はビジネス面での評価が急激に落ちており、ついに半導体業界で時価総額をエヌビディア(NVDA)に抜かれています。

【図表1】米国主要半導体会社の時価総額、10年間の株価
出所:筆者作成


インテルのこの10年間の株価は2.3倍なのに対し、エヌビディアは実に38.6倍、その他の会社の株価を見てもインテル株のパフォーマンスの悪さが目立ちます。(図表1参照)

インテルとエヌビディアの過去10年間の株価チャートは以下の通りです。(図表2,3参照)

【図表2】インテルの過去10年間の株価チャート
出所:マネックス証券米国株取引サイト
【図表3】エヌビディアの過去10年間の株価チャート
出所:マネックス証券米国株取引サイト

インテルはなぜ苦境に陥ったのか?

インテルはNYダウ指数にも採用されている銘柄です。同社の採用は1999年、当時はマイクロソフト(MSFT)のWindowsとともにパソコン市場を席巻し、ともに独占禁止法に問われたほどです。そのインテルが今、苦境に陥っているのはなぜでしょうか。

原因は大きく分けて2つに考えられます。1つは、同社の技術力が競合他社に劣ってきていることです。同社が強みとしていたパソコンでの半導体のシェアではアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)が大きく伸びています。もう1つは成長分野で大きく遅れをとったことです。対照的なのが上記のエヌビディアで、同社は人工知能や自動運転向けの半導体で大きな存在感を示しています。

そうした中、PCメーカーのインテル離れも進んできました。特に衝撃だったのはアップル(AAPL)が自社のPCのCPUをインテル製から自社設計に切り替えたことです。そして、2020年11月に発売した自社PCではAppleシリコン(M1)と呼ばれる自社設計の半導体の搭載を開始しました。さらに、その性能がインテル時代を大きく上回るとして話題になっているのです。アップルはiPhoneやiPadなどで自社半導体を導入しており、その知見を活かしたとのことですが、11月発売のものは最も安価なMacBook Airがその直近に発売されたインテル製の、高価なモデルのパフォーマンスを凌駕したというのです。

アップルはこの半導体の製造を台湾積体電路製造(TSMC)に委託しています。同社はまさにインテルが苦しんでいる高性能な半導体製造をリードしている会社です。その高性能さに加え、アップルはCPUなどの半導体類とメモリを一体(ユニファイドメモリー)にして、より性能を高めています。

アップルのPCは量産効果も大きいため、そのような製造法が適しているということになりそうです。11月発売の専門メディアでその評価を見ると、絶賛の嵐です。それはインテルにとっての逆風でしょう。そして、さらに逆風が続きます。マイクロソフト(MSFT)も自社で販売する「Surface」などPCやサーバに自社設計の半導体を搭載する計画を進めていると報道されたのです。

このインテルの苦境に対し、サード・ポイントはどのような方針で同社に投資しているのでしょうか。次回以降、詳しく見ていきたいと思います。