2円レンジでの緩やかな米ドル/円下落トレンドが変わる可能性

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

今回は米ドル/円中心に1月の為替予想について考えてみたいと思います。米ドル/円は、昨年3月の「コロナ・ショック」が一段落した後は、緩やかな下落トレンドが続いてきました(図表1参照)。そしてその下落トレンドは、90日MA(移動平均線)が上限、そしてそれを2%下回った水準が下限といった約2円のレンジが下方シフトするものでした(図表2参照)。

【図表1】米ドル/円と90日MA (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成
【図表2】米ドル/円の90日MAからのかい離率 (2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

この2円レンジは、足元では102.6~104.7円程度。従って1月の米ドル/円は、引き続きこのレンジ内の推移にとどまるか、それともいよいよこのレンジをブレークするかが、最初の焦点になるでしょう。

ではレンジ・ブレークとなるのか。その可能性は十分あるのかもしれません。というのも、1月の米ドル/円は値幅が拡大する傾向があるからです。昨年こそ、1月の米ドル/円値幅は2円台にとどまりましたが、一昨年までは4年連続で5円以上の大幅な値幅となりました(図表3参照)。

【図表3】過去5年の米ドル/円の1月足と年足
出所:マネックストレーダーFXをもとに作成

新しい年が始まったばかりの1月は、米ドル/円の場合でも大きく動いて値幅が拡大する傾向があるようです。そうであれば、すでに半年以上も続いてきた2円レンジ、足元なら102.6~104.7円というレンジを、この1月相場でブレークする可能性は注目されるでしょう。

では、レンジをブレークするならその方向は米ドル安か、それとも米ドル高か。ちなみに、1月の米ドル/円は過去4年連続で陰線(米ドル安)となりました(図表3参照)。ここ数年の1月の米ドル/円は、大きく動きやすく、そして米ドル安・円高気味で推移する傾向が続いてきたのです。

ちなみに、相場の世界には「1月効果(January effect)」という言葉があります。1月の相場の動きは、その年の動きを示すことになりやすいといった意味です。実際、上述のように1月の米ドル/円は昨年まで4年連続で陰線となりましたが、じつは年足(その年の終値と前年末終値の比較)は昨年まで5年連続の陰線でした。要するに、過去4年連続で、1月の米ドル安・円高は、その年の米ドル安・円高を結果的に先取りしたものだったわけです。

まさに過去4年間の米ドル/円は、「1月効果」通りに、1月相場がその年の流れを決めたようになっていたわけです。では今年も、1月は米ドル安・円高方向にレンジをブレークし、それは結果的に今年一年の米ドル安・円高の流れを決めるものとなるのか。

そういった感覚で見てみると、クリスマス休暇明けで、実質的に新年相場の前哨戦となった先週、とくにこれといった米ドル売り材料があったわけでもなさそうだったにもかかわらず、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルなどは軒並み年初来の米ドル安値更新となりました。

昨年は「コロナ・ショック」一段落後米ドル全面安となりました。そして11月の米大統領選挙後も、円以外の主要通貨に対して米ドル安再燃が目立ちました。こういった「米ドル売りの成功体験」をもとに、新年相場に対してもまずは米ドル売りトライの機運が高まっている感じはあります。

ただ少し気になるのは、米ドルの「売られ過ぎ」懸念です。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=日本円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルのポジションをもとに試算)は、売り越しが20万枚程度に達しました(図表4参照)。経験的には、米ドルの「売られ過ぎ」懸念が強くなっていることを示しています。

【図表4】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション (2010年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

以上をまとめてみます。1月の米ドル/円は大きく動く傾向があるため、過去半年以上も続いてきた2円レンジでの緩やかな下落トレンドが変わる可能性も注目される。米ドル/円が大きく動き出すなら、「コロナ」後の米ドル売り「成功体験」からも、まずは米ドル売りトライの機運が強そう。ただ米ドル「売られ過ぎ」懸念も強まっている点は要注意、といった感じではないでしょうか。