みなさん、こんにちは。東京株式市場はどうも上値が重くなってきた印象です。日々の値動き幅もかなり限定的となっており、全体的に方向感が乏しくなってきました。

Go Toキャンペーンなどによりコロナ禍からの経済回復が少しずつ進んでいるように見えますが、株価は先行して上がっており、既に織り込み済みという感も拭えません。

衆院解散・総選挙は「すぐにない」との見方が広がり、米大統領選も先行きが読み難い中、株価への材料は当面見当たらない状況となっています。筆者は株価の日柄調整はまだしばらく継続するのでは・・・との見方にあります。

そもそも、DXの定義とは

さて、今回は久々に「相場のテーマを読み解く」シリーズとして、DXを取り上げたいと思います。

DXとはデジタルトランスフォーメーションの略称で、「デジタル技術の活用により、組織やビジネスモデル、生活スタイルなどを変革すること」と定義されるのが一般的です。従来から注目されてきたデジタル化やIT化といった「プロセスの変換」にとどまらず、それらが社会構造や既存の価値観に変革をもたらすことを想定した概念です。

2018年に経済産業省は、古い基幹システム(既にデジタル化やIT化がなされたものでも、組織変革やビジネスモデルの転換を促さないもの)のままでは2030年にかけて年間12兆円の経済損失が発生する懸念があるとしました。また、逆にDX化を進めることで2030年には年間130兆円の経済効果が期待できるとの試算を明らかにしています。

もはや単にIT化するだけでは十分でなく、それらにDXの概念を入れ込むことが重要だと示したわけです。以降、株式市場でもDXは折に触れて注目を集めるテーマとなっています。

コロナ禍を機に加速したDX化の流れ

この流れはコロナ禍をきっかけに、より注目を集めています。

言うまでもなく、仕事や日常生活においてはWEBなどを使ったリモートプロセスが劇的に浸透し、まさにDXの概念通り、「ビジネスモデル・生活スタイルの変革」が否応なしに迫られることとなったためです。

ハンコの使用抑制やリモートワーク導入などは従前からその可能性への期待はあったものの、従来スタイルを敢えて変える必然性に乏しく、なかなか現実のものとなっていませんでした。コロナ禍はそれら社会生活の変革を促す強烈なカタリストになったと言えるでしょう。さらに菅新政権はデジタル庁の設置に踏み切り、この動きの加速を狙っているように思えます。

その結果、DXは(それでも一定の注目度のあった)コロナ前を遥かに上回る注目度で株式市場から認識される状況に至っています。緊急事態宣言後の2020年7-9月に新規上場した企業20社のうち、実に14社(70%)はDX関連と目される情報・通信業者でした。DXをより広義に捉えると、その比率はさらに上昇します。

そして、DX関連と位置付けられた企業の株価は上場後もかなり「ヒートアップ」した展開となっています。これらは株式市場がいかにDX関連に対して期待しているかが伺える証左と言えるでしょう。

過熱の様相を呈するDX

しかし、いかにDXへの期待値が大きいとしても、昨今の「DXフィーバー」とも言えるような過熱ぶりにはやや懸念を抱かざるを得ません。もちろん、社会行動様式が変革するとすれば、現時点で計算できる一般的なバリュエーションで判断すべきでないことは明らかです。

とは言え、DXの定義をあまり吟味せず、情報・通信関連であればあたかも全てがDX関連かのような捉え方をすることもまた、「極めてリスキーである」と言えるでしょう。DXとは言い難いような企業までも一部で持て囃されている昨今の傾向は、このテーマ相場が既に一旦峠を越えつつあるのではないかという疑念すら喚起させるものとなっています。

2000年頃のITバブル期も、「IT」と唱えるとどんな銘柄でも高い株価がついた時期をピークに調整局面へと入っていきました。その後、本当の意味で実力を持つIT企業のみが現在の地位を築いているのです。現在をDXバブルとは位置付けませんが、ややもすると、そういった状況に転化してしまう可能性は十分にあると考えておくべきでしょう。

真のDX企業を見極める3つのポイント

そういった中で、真のDX企業をしっかりと見極めていくことが非常に重要です。見極めのポイントは大きく3つあります。そのポイントとは、(1)得意分野や付加価値の源泉などが具体的にわかるか(明らかにされているか)どうか、(2)それが自ら社会行動様式を変えていくことのできる仕組みと思えるかどうか、(3)その仕組みを浸透させるアクションを起こしているかどうか、の3つです。

もちろんこの3つが確認できたとしても、DX化を実現できない企業もあるでしょう。しかし、少なくともこの3つを満たすことが出来なければ、DXの具現化は至難の業となるはずです。

過熱の様相を呈する今だからこそ、しっかりと本質を見極めていただきたいと考えています。