直近の価格動向

9月に入ってからのJ-REIT価格は、やや軟調に推移している。東証REIT指数は8月中旬に1,700ポイント台を回復し、8月末には1,750ポイントに近づく水準まで上昇した。しかし9月に入ると前月末比でマイナスとなる推移が続いている。

8月中旬からの東証REIT指数の上昇は、6月決算のオフィス系銘柄の業績予想が堅調だったことが要因と考えられる。コロナ禍がオフィス系銘柄の業績に与える影響が投資家の想定よりも軽微であったため、オフィス系銘柄の価格が上昇した。オフィス系銘柄は時価総額が大きい銘柄が多いことから、東証REIT指数への影響度が強い。

一方でオフィスビルの空室率の悪化は続いていることや、短期的に価格が上昇したことで利益確定の動きが広がったことによりJ-REIT価格は反落しているものと考えられる。9月中旬には7月決算銘柄の業績予想の公表が始まるため、オフィス系銘柄の業績予想が引き続き堅調なことが明らかになれば、J-REIT価格全体も上昇する可能性がありそうだ。

ホテル系の値動きには注意が必要

なお8月には、インヴィンシブル投資法人(証券コード8963)とジャパン・ホテル・リート投資法人(証券コード8985、以下JHR)の2銘柄が単月で30%近い上昇を示した。ただしこの2銘柄はともにスポンサーが運営するホテルの賃料に対し、変動賃料だけでなく固定賃料も減免している。これに伴い分配金は90%を超える減配(※)となっており、業績面を受けての価格上昇とは考えられない。

上記2銘柄も含めホテル系は8月に価格が大幅上昇したが、中長期的な業績回復を見込んだ投資拡大とは考えられない。また5月にも同様に価格が上昇する局面があったが、その後は急落する動きとなっている。例えばJHRの価格を見ると、4月末の36,000円から6月8日には52,500円まで上昇したが、7月末には38,150円まで下落している。

業績面の裏付けがない状態が続いていることから、ホテル系の8月の価格上昇も5月と同様に短期的なものとなる可能性がある点には注意が必要だ。

物流系の価格下落は慌てる必要なし

一方で8月の物流系銘柄の価格は、日本ロジスティクスファンド投資法人(証券コード8967)が業界で唯一10%を超える下落になるなど、総じて弱含む展開となった。3月中旬の急落以降、物流系銘柄の価格は東証REIT指数が冴えない動きを続ける中で上昇を続けてきたため、利益確定の動きが広まったものと考えられる。また物流系銘柄が増資を行う動きが続いたため、需給面での悪化懸念も価格下落に影響したとみられる。

しかし物流施設の賃貸市況は好調な状態が続いている。業績面での死角はないことから、利益確定売りが一巡すれば、価格が再度上昇基調に転じる可能性は高いと考えられる。これは、投資家が利回りを求める「利回り狩り」の動きが続いているためだ。

物流系銘柄は価格が下落したが、まだ利回りとしては低い銘柄が多い。従って、積極的に投資を行う必要性は低いが、既に保有している銘柄の売却を急ぐ必要もなさそうだ。9月は機関投資家の中間決算にあたる時期であるため利益確定の動きが続き、さらに価格が下落することがあれば投資も検討する、というスタンスが重要と考えられる。


(※)ジャパン・ホテル・リート投資法人の当期(2020年12月期)の業績予想では、分配金が前期比98%の減配予想。インヴィンシブル投資法人の2020年6月期は前期比96%の減配、当期(2020年12月期)の業績予想は未定となっている。