日本の公的年金制度には、会社員などが加入する厚生年金保険と、自営業者などが加入する国民年金保険の2つがあります。

会社員の方の場合は厚生年金保険料の中に国民年金部分(基礎年金部分)が含まれており、給与天引きで支払われるため「未納」になるということはありません。一方、国民年金保険料は自分で収めるため、収入状況などにより「未納」や最悪「未加入」という方もいます。

昔は「年金なんて、もらえないかもしれないものは払わない」という自営業の方もよくいらっしゃいましたが、実はそれにはかなりのデメリットがあります。今回は国民年金保険料を支払うべき4つの理由についてお伝えします。

長生きリスクに備えるために

国民年金を受給するために必要な最低限の加入期間は20歳から60歳の間の10年。この10年に満たないと、年金をもらうことができません。最大加入期間は40年で、その場合は満額受給できます。2020年度は年額78万1,700円です。10年加入した場合は、年額19万5,000円ほどの受給となります。この金額が、生きている間もらえるのです。

よく、年金保険料を払っても元が取れないのではないか、という人がいますが、実は元はきちんと取れます。現在の国民年金保険料は16,540円。これを40年支払ったとすると、総支払額は793万9,200円になります。受取金額はいくらになるかというと、満額の年金受給額は年間78万1,700円ですから、10年2ヶ月で794万7,000円ほどになります。

10年ちょっとで支払った保険料以上の年金を受給できることになりますから、それ以上生きる人にはお得なものなのです。65歳から受給しても75歳で元が取れると思えば、加入して損はありません。国民年金は、長生きリスクに備えるには最適だといえるのです。

老後資金づくりにiDeCoも活用できる

老後資金を作る私的年金制度であるiDeCo(個人型確定拠出年金)は、国民年金(厚生年金)保険料を収めていなければ使えません。もしすでにiDeCoで積立をしているという場合でも、年金保険料を納めていない月の掛け金は、還付され積み立てられません。また、免除されている場合もiDeCoはできません。

iDeCoは定期預金などの積立もできますが、税優遇を受けながら投資信託の長期積立ができるところが魅力の制度です。投資なので元本割れすることもありますが、長く積み立てるほどお金が複利で増えやすく、老後資金づくりに最適です。老後資金をどのように作ると良いかわからないという方にぜひ使っていただきたい制度です。

iDeCoは現状では60歳から70歳の間に受給を開始しなくてはいけないのですが、今後最大75歳まで延長して受給開始時期を選べるようになります。また、国民年金の加入期間が40年に満たない場合、60歳以降に「任意加入」すると、65歳までiDeCoの掛け金を拠出できるようにもなります。老後資金づくりに向けた積立制度となるでしょうから、利用できる環境は作っておきたいものです。

万が一の時に、障害年金・遺族年金を受給できる

年金というと「老齢年金」ばかりに目が向いてしまいますが、被保険者が亡くなった時に遺族が受け取る「遺族基礎年金」、一定の障害を負ってしまった時の「障害基礎年金」という保障も付いています。

遺族年金は、亡くなった方に扶養されているお子さん、もしくはお子さんがいる配偶者が受け取れる年金です。ただし、亡くなった方が年金保険料を25年以上、または年金加入期間の3分の2以上の期間納めていることが受給の条件です。免除を受けている場合でも条件を満たしていることになります。

障害年金は、病気やケガによって生活や仕事などが制限されるような障害等級1級2級などの障害状態になったときに受けられる年金です。初めて診察を受けた月の前々月までの時点で、年金加入期間の3分の2以上、保険料を納めている、または免除されていることが条件です。また、初診日が65歳未満で、その前々月までの1年間に保険料の未納がないことも条件となります。

このような保障があるので、国民年金保険料は支払う、または支払いが困難であれば免除等の手続きをすることが大切なのです。

強制徴収になると財産が差し押さえられる場合も

年金保険料を納めることは義務ではありますが、納めないことによる罰則はありません。しかし、納付期日を過ぎると年14.6%の延滞金が発生します。そして督促状が届き支払いの催促をされますが、それでも未納のままだと「強制徴収」の対象となってしまいます。強制徴収の対象は年収や未納期間などにより異なりますが、支払わなければ財産が差し押さえられてしまう場合もあります。

この強制徴収は年々増えており、2015年では7,300件ほどでしたが、2018年には18,000件にもなっています。差し押さえの対象となる財産とは、給料の最大4分の3・銀行預金(定額預金などを含む)・自宅などの不動産・生活必需品以外の動産・自動車・有価証券などの債権などです。

以上のことから、国民年金の未納、未加入はデメリットになることがお分かりいただけたかと思います。これらは家計相談の時にもお客様にお伝えしていることです。

公的年金は高齢化が進むにつれ、魅力は薄くなるかもしれませんが、それでも長生きリスクに備えるものになります。未加入、未納などを適当に考えている人は、今をきっかけに改め、加入、納付を検討してみてください。