ちょっと今日の下げは理由がわからない。まあ、そうは言っても明確な理由がある株価の動きのほうが珍しいので、理由がわからないのは不思議なことではない。しかし、それでも考えてみる。なぜここまで大きな下げになったのか?米国のGDP?No. それなら朝から大きく下げるはず。円高?このところずっと円高推移だった。今日だけ過剰に反応する理由がない。コロナ感染者数の増加?東京の感染者数が400人を越えた。確かにこれが嫌気された感はある。しかし、昨日は367人で日経平均は57円安だ。今日463人になると500円超の急落になる理由がない。つまるところ、複合要因だろう。悪材料が複数重なり、さらに月末・週末のポジション調整も重なって大きな下げになった。そんなところだろう。
この押し目は買うべきだと思う。
理由1
世界のマーケットの流れは「リスクオン」だからだ。大槻さんも書いているように、リスクが高い資産が買われている(大槻奈那の「金融テーマ解説」)。コロナが終息せず第二波が来ているなか、米中対立も再び激化とあっては、投資家はリスク回避的になるのが自然だ。金先物は9年ぶりに史上最高値を更新、米国10年債利回りは0.5%台に低下、そして動きの乏しかったドル円相場も一時104円台をつけるなど円高が進んだ。金、米国債、円 - いずれも安全資産の代表である。こうしたものにおカネが流れるのは投資家がリスク回避姿勢に傾いていることの表れ…と捉えるのは表層的である。安全資産である金、米国債、円が買われる一方、豪ドルなどの資源国通貨やビットコインなどの仮想通貨、さらにハイイールド債といったリスク資産も買われている。
この背景にあるのはドルの独歩安だ。FRBの大規模緩和が長期化するとの見通しからドルが売られている。FRBの緩和が長期化するのはそれだけ経済が弱いからであり、それを受けてのドル売りならば、やはり「リスクオフ(回避)」では?と思われるかもしれない。しかし、コロナショックがピークに達した今年の3月に起きたことを思い返してほしい。NYダウが1日で1000ドル、2000ドルの急落を繰り返しサーキットブレーカーが頻発する株の大暴落が起きた。その時は安全資産の米国債も金も売られた。換金売りである。人々はすべての資産を売り払いキャッシュに逃げ込んだのであった。その受け皿になったのがドルであった。ドルインデックスは急騰した。市場が本当に恐怖を感じるとき、究極の安全資産/通貨は基軸通貨である米ドルだということが証明された。いま起きているのはその逆だ。究極の安全通貨であるドルから、ドル以外のあらゆる資産におカネが流れている。つまり3月のパニック局面で起きたドルへの緊急避難の逆転現象だとすれば、いまは「リスクオン」である。
そしてそのドル安をもたらしているのはFRBによる流動性供給である。つまるところは未曽有の財政・金融による過剰流動性がマネーをリスク資産に向かわせるという大きな構図がある。
理由2
こうした状況に加えさらに需給がタイトになっている。「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」に、新規の信用売りができない「売り禁」の措置が講じられた。買い方に有利になったため、これまでの売り方は買い戻しを迫られる。買い入れのルールを柔軟化したとみられる日銀のETF買いも相場を支える要因だ。需給面からも下値余地は少ない。今日の日経新聞「スクランブル」は日銀のETF買いについて書いていた。<中長期の投資家を中心に日銀買いに不満は強い。押し目買いの機会が奪われるからだ。>
日銀のETF買いのせいでいいところを買わせてもらえないという愚痴だ。ふ~ん。じゃあ、今日みたいな日には喜んで買っているんだろうね?そんなことはないだろう、だったらこんなに下げない。だからこの手の記事は眉に唾して読むべきだ。
理由3
肝心の業績が心許ない。この円高が企業の業績をさらに悪化させる懸念もある。だが、繰り返しになるが、これは円高ではなくドル安だ。対ユーロでは円安で、円の実効レートをみるとドル円相場ほど円高になっていない。企業業績への影響はそれほど深刻なものにはならないだろう。
理由4
コロナ感染者がさらに増えるリスクは?もちろん、ある。ただ、そうなれば再び緊急事態宣言が発出されるだろう。そこまでいかなくても自治体で休業要請などが強化される。一度、それで封じ込めたので政府・自治体の規制強化は株式市場にポジティブに受け止められるだろう。前回もそうだった。
下値目途
日経平均は6月半ばにも700円安して200日移動平均を割り込んだが、翌日は1,000円超の反発を見せた。200日移動平均割れで21,500円というのがひとつの下値の目途だろう。