「どんな方法なら、誰でも着実に資産形成できるのだろうか」と、いつも考えています。特別な才能や運が無くてもうまくいく方法。それは、短期で収益が上がる方法ではなく、時間をかけて運用する方法ではないかというのが、私の考えです。

もし短期トレードで資産を増やせても、それは「偶然」や「まぐれ」の場合が多く、長期的に資産を増やすことは困難です。なぜなら、短期トレードでは確率的にプラスアルファのリターンを生み出しにくいからです。

付加価値が生まれない短期トレードの仕組み

例えば、100円で株式を購入し、10分後に101円で売却すれば、短期トレードで1円の利益が生まれます。しかし、このトレードの裏側では、世の中のどこかで、100円で株を売った人と、101円で株を買っている人がいるはずです。彼らは、トータルでは1円損をしています。

これは、麻雀を4人でやると、全員の勝ち負けの点数の合計がゼロになるのと同じです。自分が勝てば、誰かが必ず負ける。このような取引を長期で延々と続けていても、自分が勝ったり負けたりで、確率としては50%に収れんしていきます。

自分の利益は、他の市場参加者の損失から得られたもので、市場全体で見ると新しい価値が生まれていないのです(金融マーケットでは、取引コスト分がマイナスになります)。

私が為替や株式のデイトレードをお薦めしないのは、付加価値がそこに生まれていないため、資産を長期的に増やすのが難しいと考えるからです。

個人投資家が市場から撤退するワケ

また、投資対象を分散させることも重要です。集中投資の方がうまくいったときに大きなリターンが得られますので、個人投資家の中には投資対象を集中させたり、FX取引のようにレバレッジをかけたりする人もいます。

うまくいけば大きなリターンが得られる投資は、逆に言えばリスクが高く、失敗すれば大きな損失につながります。

市場から消えていく個人投資家の多くは、利益を充分に得たからではなく、大きな損失に耐えられなくなったことが理由で撤退していくのです。

とすれば、長期で投資を継続するために必要なことは、投資対象を分散してリスクを抑え、万が一の損失が発生しても、一定の範囲に抑えることです。

コスト削減で投資リターンを向上

コストは投資リターンを低下させる要因です。例えば、投資信託を使った投資であれば、販売手数料がかからない「ノーロード・ファンド」の中から信託報酬の低い商品を選択することによって、コストを引き下げることができます。

コストを1%下げれば、その分リターンが1%上がります。地味な作業ですが、コスト削減によって投資リターンを着実に向上させることができるのです。

「楽しい投資」ではなく「地道な投資」がオススメ

確率的に勝てる可能性の高いことを、なるべくたくさんやる。そうすれば、「大数の法則」によって、その確率に近い投資のリターンが得られます。これが、資産運用で成功するために最も合理的な考え方だと思います。

確かに、短期トレードで大きなリスクを取って、思い通りにうまくいけば大きなリターンが得られ、「楽しい投資」ができるかもしれません。もし、趣味として、ハラハラドキドキしながら投資を楽しみたいのであれば、それで良いかもしれません。

しかし、本気で資産を増やしたい、守りたいと考えているならば、そのような「楽しい投資」ではなく、つまらないかもしれませんが「長期・分散・低コスト」のような「地道な投資」にもっと注力した方が良いでしょう。