マイホームというのは、今でも多くの人の憧れだと思います。私も友人の家に行って注文建築で作った家に魅せられて、40代の時に東京の郊外に自宅を建てたことがあります。しかし、大人の事情もあって、結局数年後に売却。今は、都心の賃貸マンションに住んでいます。
住宅ローン返済に苦しむ人が増えている
「住宅ローンを返済できない」という相談件数が、ここ数ヶ月で急増しているそうです。これはコロナショックで売上が激減したり、仕事を失ってしまったりした人が住宅ローン返済に苦しんでいるからです。元本返済を猶予する救済策などもありますが、住宅ローンの残債が減るわけではありませんから、根本的な解決にはつながりません。
これまで日本では低金利によって、住宅ローンが借りやすい環境が続き、以前よりも多くの金額を借入できるようになっていました。住宅ローンの平均借入残高は10年前に比べると増加しています。その分、元本の返済負担も大きくなり、無理をして限界近くまで借りた人が返済できなくなるケースが増えているのです。
住宅ローンの返済が出来ないと最悪の場合、売却ということにもなりかねません。しかも、住宅ローンの残債よりも売却価格が下回ってしまえば、マイホームを失った上に、借金だけが残るという事態もあり得ます。
マイホーム購入vs賃貸、損得比較は意味がない
それでもマイホームにこだわる人が多いのは、「マイホームは住宅ローンを支払って自分の所有になるが、賃貸の場合、家賃を支払っても何も手に入らないから勿体ない」という考えがあるからかもしれません。
しかし、例えば35年間の住宅ローンを返済し終わった時には、新築で購入したマイホームは築35年になっていて、少なくとも建物価値は下落しています。自分のものになったとしても、その価値が大きく下落していれば、所有にこだわる必要はなくなるでしょう。
また、住宅ローンを借りてマイホームを購入するのと、賃貸に住み続けるのではどっちが得かと仮定の数字で計算して比較するのも、あまり意味がありません。不動産価格が上がるなら買った方が得になることが多く、下がるのであれば借りた方が得というだけのことです。
ローンの返済金額と賃貸の場合の家賃を、あれこれ比較しても、結局は不動産マーケットの価格次第で損得が決まる場合が多いということです。
もし、買った方が家賃より毎月の返済が少なくなったとしても、物件の価値が下がってしまうなら、賃貸の方が良かったということにもなり得るのです。
これからの日本では賃貸がオススメ
高度経済成長期のように日本の不動産が全国で右肩上がりに上昇していた時ならともかく、人口減少の影響で日本の不動産価格は一部の例外を除いて下落していきます。
また賃貸なら、収入が減少したり、仕事を失ったりした場合、家賃の安いところに引っ越せば良いのです。住宅ローンのように固定化されないので柔軟に支出をコントロールすることが可能です。
したがって、特にこれからの日本で、マイホームを購入するのは、リターンよりもリスクの方が大きく、メリットが少ないと言えます。
マイホームには経済的なメリットはありませんが、賃貸とは違って、自分の好みに自宅を勝手にカスタマイズできること、そして所有していることによる満足感というお金に換算できないメリットがあるのは事実です。
どうしても、「自分のこだわりが実現できるような家を作ってみたい」あるいは、「自分の城が欲しい」という人がいるのなら、それを否定するつもりはありません。
しかし、マイホームと賃貸と両方を体験して到達した私なりの結論としては、ライフスタイルに合わせて住み替えができ、リスクが低い賃貸の方が、これからの変化の激しい時代に向いているということが言えると思います。