マネクリにてご執筆いただいておりましたオフィス・リベルタス 創業者 取締役、大江 英樹 氏が2024年1月1日にご逝去されました。心より哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。

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前回、老後に向けて考えておくべき重要な順序が「W.P.P.」だと言ったが、今回はその内、2つめのPである公的年金と、3つめのPの一部である退職給付制度について整理しておこう。これは詳しく書き始めると1冊の本になってしまうくらいなので、ごく基本的なことだけに絞ってお話をしたい。

公的年金は仕事や生活のプランに合わせて受給開始を決められる柔軟な制度

まず公的年金は「終身給付」だということは前回も話した通りだが、一般的に支給が開始されるのは65歳となっている。但し、これは65歳からしか受け取れないということではなく、現時点では60歳から70歳までのいつでも好きな時から受け取り始めることが可能だ。これは何を意味しているかというと、自分の仕事や生活のプランに合わせて自由に受給開始を決めることができるという柔軟な制度だということだ。

仮に60歳の定年後は一切働きたくないということであれば、60歳から年金を受け取っても構わない。逆に70歳までは働こうというのであれば、受け取り開始を70歳まで遅らせても良いのだ。但し65歳を基準として、それよりも早く受け取り始める場合は支給額が減るし、逆に遅く受け取り始めると支給額は増える。最大30%減から42%増までの幅がある。Work longer(長く働く)という方針であれば年金支給開始は遅らせるのも選択肢の一つだ。仮に70歳まで送らせると支給額が42%増える。5年送らせて42%だから、これは実質無リスクで年8%以上で運用するのと同じことになる。

退職金受け取り方法は退職一時金or企業年金方式

次に退職給付制度である。これは会社によって様々なので一概には言えないが、多くの場合、「退職一時金」としてまとめて受け取るか「企業年金」として長期間にわたって少しずつ受け取れるかを選択できる場合が多い。税の面だけを考えれば恐らく一時金で受け取った方が有利になるケースが多いだろうが、そちらが必ずしも有利とは言い切れない。

なぜなら企業年金の場合、一定の年利回りで運用することが決められており、多くの場合、その利回りは年率2から2.5%程度だ。したがって、一時金でもらったお金をこの利率以上で自分が運用出来る自信があれば、それも良いが、単に定期預金などで置いておくぐらいなら、年金払いで受け取った方が有利だろう。

今、税の話が少し出てきたが、年金や退職金にまつわる税についても基本的なことは知っておいた方が良い。退職一時金の場合は退職所得控除が適用されるため、かなりの金額までは受け取っても税金はかからない。仮に35年勤続の場合だと、1,850万円までは退職所得控除があるため、実質税金はゼロだ。

一方、年金で受け取った場合は「公的年金等控除」が適用される。65歳未満であれば公的年金等の収入金額の合計額が60万円、65歳以上の場合は、110万円までなら所得金額がゼロとなるため税金はかからない。これは公的年金だけではなく、企業年金、あるいはiDeCoのような確定拠出年金の受給額も合算した上での話だ。

したがって、何歳まで働き、どれを受け取ってどの受け取りを伸ばすかは、人によって異なるし、その受け取り方も退職後のキャッシュフローを考えると一時金と年金の受け取る比率をどのようにするかも考えなければならない要素である。これらを組み合わせるとまるでパズルのようになる。

退職金のベストな受け取り方法は人それぞれ

誰にとってもこれが一番良い、という方法はないので、自分自身でどういう受け取り方をするのがいいか、考えておくことが必要だろう。まずは「ねんきん定期便」で金額を確認すると同時に、自社の退職給付制度がどうなっているかを確認するところから始めたい。退職給付制度がない場合は、iDeCoやNISAがとても重要になってくる。次回は50代からのこれらの制度の利用方法について話したい。