初心者が投資を始めるにあたっての注意点やアドバイスをマネクリ編集部が投資のプロにたずねました。今回は、初心者が株を始める際の心構えや投資先について株式会社インベストラスト 代表取締役の福永博之氏にQ&A形式で回答してもらいました。

このコロナショックのタイミングで初心者が投資をはじめる場合に、注意しておいたほうがよい点や心構えがあれば教えてください。

ある程度の先の見通しが立つまでは、今、株価が安いからという理由で買うのは避けたほうがよいと思います。

中長期投資で銘柄を選ぶ際、業績に注目して銘柄をピックアップすると思います。しかし、コロナショックの今は業績が発表されても前期実績だけで今期の予想が発表されないケースが増えています。今期見通しが発表されないのは先行きの見通しが立たないからです。

ですから安いという理由だけで飛びつかず、今本当に買うべきなのか熟考したほうがよいと思います。

過去ご経験された暴落相場ではどのような対処をしましたか。

ベア型ETF(相場が下降すると価格が上昇する上場投資信託)や、つなぎ売り(信用取引を利用した取引手法。保有している株の値下がりが予想される局面で、現物株式を売却せずに、信用取引で空売りをすること)の活用に加え、デリバティブ(225先物、オプション)などの利用といった対処法があります。相場下落局面で大きな痛手を避けるために、初心者の方も習得してもらいたいと思います。 

これから、初心者が株式投資を始めるならどのようなもの(業種や方法など)がよいと思いますか。

コロナショックの収束を待って、ある程度目途が立ってきた時点で投資をするのがよいと思います。また、銘柄選びでは、変化率に注目するとよいでしょう。

変化率とは、前期の業績と今期の業績にどれだけの差が発生したかを表した数字です。例えば、単純に赤字から黒字に転換したであるとか、売上高や営業利益が大幅に伸びたであるとか、売り上げや利益に関する項目のなかで、アップ率の大きな銘柄を選ぶのはひとつの方法です。

コロナショックでは、黒字幅が縮小したり、あるいは赤字に転落したりした企業が多く見られます。ただ、こうした業績の悪化は、コロナウイルスの感染が収束すればある程度回復するものと考えられますので、業績見通しが出始めたところでスクリーニングなどを活用し、前期と今期の変化率の大きな銘柄を選ぶとよいのではないかと思います。

初心者が投資対象を考えるにあたっては何を重視するべきだと考えますか。また、そう考える理由を教えてください。

今の時期、最も気をつけたいのはフリーキャッシュフローです。利益が出ていて、配当もあり、PERも割安とされる銘柄を買いたくなると思いますが、ここには落とし穴がある場合があります。それが黒字倒産です。

黒字倒産とは、黒字であるにもかかわらず倒産してしまい、株価が紙切れになってしまうことです。過去の暴落局面では、リーマンショック後にこうした事例が見られました。

黒字倒産とはその名の通りの倒産しているのですが、売り上げや利益関連の指標を一見しただけで判断できないところが厄介です。なぜなら、こうした銘柄は高配当利回り、低PERといった割安企業としての条件がそろっているからです。では、なぜそんな割安銘柄が倒産してしまうのか。主な要因は資金繰りの問題が発生することにあります。

企業は仕入れや製造などにお金が必要になると同時に、仕入れや製造した商品を販売することで資金を回収しています。しかし、見かけ上は利益が出ていても、資金の回収ができなくなって次の仕入れや製造が不可能になると資金繰りに行き詰り、黒字倒産してしまうのです。

もちろん、無借金企業や現預金をたくさん保有している企業にはそうした倒産の可能性は低いと考えられますが、一方で現預金が少なく、借入金で日々の運転資金をまかなっている企業などは、資金繰りに行き詰ると黒字倒産を起こしてしまうことになります。

こうした黒字倒産に巻き込まれないために初心者が最低限見なければならない項目があります。それがフリーキャッシュフローです。フリーキャッシュフローは、一般的に営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計のことを言いますが、この合計がプラスであることが重要です。

フリーキャッシュフローがプラスということは、営業行為によって資金が回収できていると同時に投資などの支払いがあっても資金が手元に残っているということです。今後銘柄を選ぶ際、とても割安に放置されている会社があった場合、その銘柄のフリーキャッシュフローを確認すると同時に、マイナスなら一時的なものなのか、恒常的なものなのかを確認し、黒字倒産に巻き込まれないようにしてください。

投資初心者に「今、してはいけないこと」をアドバイスするとしたら?

割安な銘柄に飛びつかないことです。仮に割安に放置されている銘柄があるとしたら、その銘柄に飛びつくのではなく、なぜ割安なのかをしっかりと調査し、その理由を確認してから投資を行うようにしてほしいと思います。

株式市場では全世界の投資家が割安な企業を探しています。そうしたなかで割安な銘柄が放置されているのには何らかの理由があるはずです。その理由を調べることで分析力や投資力が上がると思いますので、買いたい気持ちになるのをぜひ抑えて、まずは割安な理由を確認するようにしましょう。