矢継ぎ早の経済対策で市場のムードが好転

先週は、NYダウ平均が4月6日から9日の4営業日で2,666ドルもの戻りを演じることとなりました。

大きかったのは、1つに米国での新型コロナウイルスの感染拡大がそろそろピークアウトするのではないかとの期待が高まったこと。いまや“時の人”となったクオモNY州知事は先週4月6日以降、「新型肺炎の感染ペースは減速」、「死者数は遅行指標」などと述べ、そうした発言が市場にはプラスのインパクトとなった模様です。

また、もう一人の“時の人”である米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長も、先週4月8日に「状況は来週にも好転し始める可能性がある」と述べ、翌9日には「米国の死者数が6万人程度に留まる可能性がある」と述べました。

また、中国の武漢では2ヶ月半に渡った都市封鎖が解除され、あのイタリアでも死者・感染者の増加ペースが鈍化し始めてきていると伝わっています。

こうした一種の“朗報”に加え、米国をはじめとする世界の主要な国や地域の政府・当局が極めて大胆でまとまった規模の対応策を矢継ぎ早に打ち出してきていることも、市場のムードを好転させることに大きく貢献しています。

既知のとおり、米政権は3月27日に過去最大となる2兆ドル規模の経済対策を成立させたばかりですが、すでに最大で2500億ドル程度の増額を検討し始めているとされ、さらにトランプ米大統領は2兆ドル規模のインフラ投資にも意欲を示していると報じられています。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)が先週9日に総額2兆3000億ドルにも上る巨額の緊急資金供給策を決めたことも、市場に大きな安心をもたらすこととなりました。

NYダウ先物の価格推移に米ドル/円が連動する傾向

これだけの策が打たれれば、米企業はそう簡単に潰れることもなく、ならば「安くなりすぎた株価は買い」と考えられます。基本的に米株高の流れが続いているうちは、日本株も比較的底堅く推移することとなり、結果的に米ドル/円が極端に下値余地を拡げることもなくなっています

それにしても、先週の米株高はややピッチが速すぎたようにも思われ、今週はある程度の調整が入る可能性もあるという点は少々警戒しておく必要があるでしょう。

最近は東京時間の最中に時間外で取引されるNYダウ先物の価格推移に日経平均株価や米ドル/円が連動する傾向も強まっております。比較的短期のスタンスで外国為替取引と向き合う際にはダウ先物の値動きにも注意を払っておくことが必要であると思われます。

当面は「強いドル政策」が求められる

ともあれ、当面のドルは基本的には強気で見ておいていいものと思われます。むろん、FRBの政策努力によって一頃のように極端なドル枯渇懸念はすでに後退しています。

その一方で米政権が次々に巨額の経済対策を打ち出してきていることを考慮すれば、その財源をできるだけ無理なく手当てするためにも、将来的な財政不安に伴うドル安懸念の台頭に備えるためにも、当面は「強いドル政策」が求められるものと考えられます。実際に近頃はトランプ米大統領がそれを容認し始めている節もあります。

目下、米ドル/円の下値は200日移動平均線(200日線)がサポートする格好となっていますが、目先的にも米株価の調整が入れば一旦は200日線を再び下抜ける可能性もあると見られます。米ドル/円は、基本的には200日線を軸に上下其々1.5円程度の値幅で推移するものと見ます。

なお、先週は一目均衡表の週足「雲」上限まで上値を試したところで押し戻されたことから、当面は同水準をクリアに上抜けるかどうかという点も注目しておきたいポイントの1つです。一方のユーロ/米ドルは、いま少し上値余地があると見られるものの、1.1000ドル台前半あたりのところでは戻り売りで臨みたいと考えます。