リーマン・ショック、ブラックマンデー、そして大恐慌

世界的な株安は、最近にかけて反転が目立ってきました。たとえば、NYダウは、3月23日の安値、1万8000ドル程度から、もう約2割も反発しました。ただし、ここまでのところは理屈抜きで、「そういうもの」といった範囲の動きかもしれません。

NYダウの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、3月下旬にかけてマイナス30%以上に拡大しました(図表1参照)。こんなふうに、同かい離率がマイナス30%前後まで拡大したのは、1980年以降でもこれまで2回しかありませんでした。1987年10月の米国発世界同時株暴落、「ブラックマンデー」と、2008年9月以降広がった「リーマン・ショック」(図表2参照)です。

【図表1】NYダウの90日MAからのかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成
【図表2】NYダウの90日MAからのかい離率(1980~2010年)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成

ただ、この2例とも、さすがに90日MAを3割前後下回ると、米国株の下落は一巡しました。以上のように見ると、「コロナ・ショック」の米国株下落が、3月下旬で一巡したのは、さすがに過去3ヶ月(90日)の平均を3割前後も下回ってくると、株安も一息つくといったこれまでのパターン通り、つまり「そういうもの」だったということではないでしょうか

では、もう株安は完結したのかというと、それは少し怪しくなります。上述のように、今回と同様に90日MAを3割前後下回り、下落一服となった1980年以降の2例は、その後もいわゆる「V字」での急反発に向かわず、安値圏での一進一退が続きました(図表3、4参照)

以上から想像できるのは、さすがに過去3ヶ月の平均を3割前後も下回る暴落となった相場は、下がり過ぎで一旦下げ止まるものの、かといって当面の反発も限られるということではないでしょうか。

【図表3】NYダウと90日MA(2008~2009年)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成
【図表4】NYダウと90日MA(1997~1998年)
出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成

そういったことを踏まえて、改めて「もう株安は終わったのか、それならコロナ大恐慌シナリオも消えたのか?!」といったことについて考えてみましょう。

まずは今回と引き合いに出される、2008年のリーマン・ショック、そして1930年代の大恐慌における株安を、米国株、NYダウについて見てみましょう。前者における株安は、最大1年5ヶ月で54%でした。一方、後者における株安は、同2年3ヶ月で80%でした。

さて、これまでのところNYダウの最高値は、今年2月の2万9500ドル程度でした。「恐慌相場」は、それから1年半~2年半続き、その中で株価は5~8割下がるということなら、NYダウは2021年夏~2022年春にかけて、6,000~1万5000ドルへ続落するといった見通しになります

さて、最後に自分の専門の為替についてですが、まだ固定相場だった大恐慌時代はともかく、リーマン・ショック不況では、リスクオフの円高が拡大しました。今回も同様にリスクオフの円高になるかが最大の焦点となるでしょう。