今回の新型コロナウイルスに伴う暴落で、米国の著名ヘッジファンドが大きな損失を出したと報道されました。
このファンドは株式、債券、商品(コモディティ)を組み合わせて、それぞれのリスクを一定に保つ「リスクパリティ」という運用手法を編み出し、これまでの数々の混乱相場でも着実にリターンを上げてきました。リーマンショックの際も10%近いリターンを出した、30年近い歴史と実績のあるファンドです。
ところが、過去のマーケットの変動でワークした資産の組み合わせが、想定通りに動かず、年初からの下落率が20%近くになったと言われています。
相関係数が変化すると過去の経験則が役に立たない
従来の相場では、株式が売られれば、債券や金(ゴールド)などに資金が逃避して、分散効果を発揮していました。
ところが、今回は株式も債券も商品も同じ方向に下落する動きになったことが損失の背景にあるようです。投資家が一斉に全ての資産を「現金化」する動きに対応できなかった訳です。
実物不動産には「時間軸」という優位性がある
不動産投資信託(REIT)も大きく値を下げています。東証REIT指数で見ても、一時年初の高値から30%以上の急落となりました。
また、株式に対して遅効性があると言われている実物不動産も、今後REITと同様に下落するかもしれません。しかし、ワンルームマンションのような投資用の不動産には、金融市場のようなパニックは起きていません。
これは、実物不動産への投資は金融資産と比べ「時間軸」を長く取ることができるからです。
投資用不動産の場合、多くの投資家は借入をして物件購入を行います。そして借入返済は入居者の家賃から充当します。
不動産価格が上下したとしても、安定した家賃収入があれば借入返済でき、キャッシュフローが途絶えることなく、物件を保有し続けることが可能です。
また、もし借入金利が上昇したり、借入ができなくなったりすると物件の需給が悪化して不動産価格は下落しますが、今のところ金利上昇や金融機関の融資姿勢に変化はありません。
個人投資家には、金融資産と実物資産の「時間軸」の分散が有効
資産運用で重要なのは分散です。相関の低い資産を組み合わせることで、資産全体のブレを小さくすることができるというのが、ファイナンス理論で教える分散投資の基本です。
しかし、せっかく異なる資産で分散投資しても、今回のように相関係数が変化して、全ての資産が同方向に値動きするようになってしまうと、想定通りの分散効果が得られません。
そこで選択肢として考えられるのが、金融資産と実物資産を組み合わせた「時間軸」の分散です。
株式のような金融資産は、主に値上がり益を狙う資産ですから、時価評価という短期の時間軸で日々の値動きを追っていくことになります。
一方の実物不動産は、前述のように価格の変動よりも、長期的なキャッシュフローに重点が置かれます。個人投資家は、機関投資家と異なり決算もなく、自分で時間軸を長く取ることができる強みがあります。
時間軸の短い資産と長い資産という個人投資家にしかできない「時間軸」の分散が、長期で資産を増やしていくためには有効だと考えられます。これが、今回のコロナショックで得られた教訓です。