2週間で激変した米ドル/円の状況

米ドル/円は先週一段安となり、一時僅かながら105円を割れる場面もありました。引き続き、「コロナ・ショック」で世界的に株価が乱高下する中で、リスク回避は教科書通りに円買いとなり、また米再利下げ期待から米金利の大幅な低下が続く中で米ドルが売られたといった両面があったでしょう。

これを受けて、2015年から続いてきた長期三角保ち合いを下放れた可能性も出てきました。長期三角保ち合いの安値と安値を結んだトレンドラインは106円程度と見られたためです(図表参照)。

【図表】米ドル/円の月足チャート(2015年~)
出所:マネックスFXトレーダー

教科書的には、三角保ち合いのブレークは、保ち合いスタートラインまで戻る動きになるとされます。保ち合いの下値のスタートは、2016年6月、ブレグジット(英国のEU離脱)ショックで記録した98円。ということは、長期三角保ち合いの下放れということなら、米ドル/円はこのまま100円割れに向かう可能性があるということになります。

米ドル/円は、ほんの2週間前には、110円を大きくブレークしたことで、逆に長期三角保ち合いを上放れした可能性が浮上しました。ところが、直後から急に「コロナ・ショック」とされる世界的株暴落が急拡大する中で、保ち合い上放れは「ダマシ」となり、112円から短期間に105円割れまで急落することで、一転して保ち合い下放れの可能性が出るといった具合に状況が激変しました。

米ドル/円が保ち合い下放れなら、もう上がってもこれまでの保ち合い下限(106円程度)すら超えられないまま、上述のように長期保ち合いの下値スタートである98円に向かうというのが基本的なシナリオになります。

米ドル/円は、この数ヶ月はNYダウなど米国株と高い相関関係が続いてきたので、上述の保ち合い下放れシナリオが展開するなら、後押しする材料の一つは株安でしょう。また、ここに来て「コロナ・ショック」を受けた世界経済急悪化への対策として金融緩和予想も再燃していますが、そうなるとどうしても主要国では相対的に政策金利の高い米国の利下げ期待が強まり、それは米金利低下をもたらすため、それも米ドル/円下落を後押しする可能性があるでしょう。

ただ、そんな株も米金利も短期間に大幅に下落した結果、「下がり過ぎ」懸念も高くなっており、その修正が入る可能性はあるでしょう。それが、米ドル/円反発要因となった場合、これまで述べてきた長期三角保ち合い下放れが「ダマシ」だったというところまでの動きになるかは重要な見極めどころといえるでしょう。