世界的株大暴落で一変した米ドル/円の状況
先週の米ドル/円は先々週から一変し急落、年初来安値更新となりました。先々週は、2015年からの長期三角保ち合い上放れの可能性が浮上すると一気に112円まで一段高となったものの、この長期三角保ち合い上放れも、先週の急落で「ダマシ」のようになりました(図表参照)。いわゆる新型肺炎クライシスの様相が急拡大する中で世界的に株価が大暴落となり、それに米ドル/円も連れた形となったためでした。
以上のように見ると、この先の米ドル/円の行方を考える上での鍵は、やはり株価ということでしょう。その株価、たとえばNYダウは先週の大暴落により、足元で2万7000ドル程度の52週MA(移動平均線)を5%以上といった具合に大きく下回りました。経験的に、このような52週MAを大きく下回る動きは一時的ではなく、すでに株高は終わり株安トレンドへ転換した可能性を示すもの。
異常なボラティリティとなった先週の動きだけでの判断は尚早ではないかと思いますが、このまま52週MAを大きく下回る状況が今週以降も続くかは、一時的な株安なのか、すでに継続的な株安トレンドへ転換したかを見極める目安といえるでしょう。
上述のように、米ドル/円は株との高い相関関係が続いてきたので、米株が株安トレンドへ転換し、さらに下落に向かうなら、米ドル/円も一段と下落に向かう可能性が高まるでしょう。
ちなみに、上述の米ドル/円長期三角保ち合いの下限は105~106円程度。先々週の上放れが「ダマシ」で、逆にその下限を下回る「下放れ」となるようなら、教科書的には保ち合い開始水準まで戻る可能性が出てくるので、2016年6月Brexit(英国のEU離脱)ショックで記録した100円割れに向かう見通しになります。
一方で、あくまで一時的な株安なら、すでにNYダウも52週MAを5%以上と大きく下回っているので、経験的にはさらなる株安は限られるところまで下がった可能性があります。そうであれば、米ドル/円も上述のような長期三角保ち合い下放れは回避される可能性が出てきます。
とはいっても、ヘッジファンドなど投機筋の売買転換点とおおむね一致する120日MAが109円程度なので、それを上回らなければ投機筋は戻り売りが基本で、米ドル/円の上値も重い状況が続きそうです。