一昔前は異文化とは同化するものだった

今年に入ってからコミュニケーション構造分析(ACS)の尺度をいくつかピックアップしてお話をしました。そもそもコミュニケーション構造分析って何のためにするのでしょうか。

コミュニケーションというのは、言語・思想・文化を含めた異文化同士の融合です。また、コミュニケーション構造というのは、異文化融合の様々なあり方を形づくる12要素のことを指します。

私たちのコミュニケーション構造は、一人一人違います。また似たような構造でも、社会的ポジションなどによって、抱える課題が異なります。

コミュニケーション構造の分析をすることで、異文化融合の仕方の個人的傾向を顕在化させることができます。ちなみに、結婚というのは、一番小さい単位での異文化融合になります。

異文化融合というのは、人類にとって初めての課題です。一昔前は、異文化というのは同化するものでした。結婚すれば、自分の文化を捨てて、嫁ぎ先の家風に同化する。「うちの家では」などと、自分の文化を持ち出すと嫌われました。また移住・移民の場合も、外国から来た人は、その国の文化になじみ、愛することが求められました。「郷に入っては郷に従え」と、同化することが当然と考えられていたわけです。

現代は異文化融合が不可欠の時代

しかし、現在は移住者の数が増えて「◯◯街」「◯◯タウン」などができ、元々からの住人は違和感を覚えることもあります。また生活保護、社会福祉、学校教育の負担などが絡んでくると、利害対立が起こる場合もあります。

現代は、異文化融合が不可欠の時代になりました。結婚やパートナーシップは、2人で作るものとなり、しかも超多様性を持つものとなりました。お互いの文化に敬意を持ち、融合する以外に存続の道はありません。また人間の移動が激しくなったため、文化が急速に混じりあうようになりました。大量の移民が移住先に完全に同化することは不可能となりました。

一昔前は、「自由と平等」という価値観として大切にされていましたが、今はグローバル規模で「異文化融合」をどうやっていくのか?という課題は不可避なものとなっています。その課題解決のためには、実は高いコミュニケーション力が必要です。そして、すべての人がこの異文化融合に向いているわけではありませんし、できるわけではないということもあらかじめお伝えしておきます。

また一人一人のコミュニケーション構造は違いますが、似たような構造でも、現実社会で自分が置かれているポジションによって抱える課題が変わってきます。

「融和性」が低いタイプも投資手法を見直せる?

ちなみに、このACSの尺度の中で「融和性」という尺度がありますが、これは、自分の生活を変えることにかかるストレスを見る尺度です。これは外から見てわかりにくいところです。この尺度が低ければ異文化融合は難しくなります。つまり、新しい物事を自分の世界に取り込むことがストレスになるということです。

例えば、部署に異動することがストレスになったりします。自分が使いなれたものに対する自分の強い愛着が、異文化融合を阻害する要因になります。逆に、コマーシャルというのは、「融和性」が高い人に向けて発信されています。新しいお店に行ったりするのが好きだったり、新しい商品をすぐ試そうという人は、「融和性」が高い人です。

投資でいうと、融和性が低いと、新しいやり方をなかなか取り込むことができず、これまでのやり方にこだわったりします。自分が今までやってきた投資手法が良い、とこだわってしまい、なかなか新しい一歩が踏み出せないのもこのタイプです。

もしあなたの融和性が低いのであれば、敢えて新しい方法を取らないというのも手かもしれません。それよりは、「今自分がやっていることで、気づいていないけれど、上手くいっていることは何か?」ですとか、「自分の世界になじみやすいものは何か?」といった、そんな問いかけを自分にしてみることもオススメです。


(※)ACS: Analysis of Communication Structureの略。カップルカウンセリング先駆者の和田真雄先生が、「個性論」という考え方のもと、計量心理学の権威である村上隆先生と日本心理学会で発表している科学的根拠のある心理テスト。一般の心理テストがEQ「行動特性」を測定しているのに対し、ACSはCQ「発想パターン」を測定しているのが特徴です。参照:CQ協会(外部サイトへ遷移します)