直近の価格動向と当面の下落目処

2月に入ってからも堅調な推移を続けていたJ-REIT価格であったが、新型肺炎の影響を懸念し株式市場が急落すると、その余波を受けるかたちになっている。東証REIT指数は、リーマンショック後の高値をつけた2019年11月初旬と同じ水準となる2,250ポイントを2月20日に回復したが、その後は続落し2月26日には2,200ポイントを割り込む結果となった。

2月20日以降の価格下落要因は、外国人投資家の売りが優勢になったためと考えられる。リスクオフの動きは、米国10年債利回りが過去最低を更新する動きとなっていることからも示されている。

したがって、当面はJ-REIT価格の軟調な動きが続く可能性もありそうだ。東証REIT指数は、2019年11月初旬に2,257高値を付けた後に2,100ポイント付近まで下落している。リスクオフの動きが強まっていることを考慮すれば、東証REIT指数が2,100ポイントを割り込む動きも想定しておくべきであろう。

反発の余地が大きいJ-REIT

ただし、今後J-REIT価格の下落が続けばJ-REIT投資の妙味が増すと考えられる。その理由として、まずJ-REIT収益の安定性に注目する投資家が増加する可能性があるためだ。

新型肺炎は、これまでの株式市場下落要因となっていた貿易要因とは異なり、日本国内の内需関連企業にも悪影響を与えることとなりそうだ。さらに2019年10月から12月のGDPは、消費税増税の影響などにより大幅なマイナスとなっていた。この点も考慮すると、内需企業の業績回復にも時間を要することになり、来年度の企業業績に対し投資家の懸念が強くなると考えられる。

2点目として、金融緩和の可能性が高くなってきた点が挙げられる。前述のように既に米国債利回りは、金融緩和を先取りするかのように急速に低くなっている。日本も1月から3月のGDPが前期に続きマイナス成長となる事態になれば金融緩和を行う可能性が高くなりそうだ。

2019年のJ-REIT価格の上昇は米国債利回りの低下と軌を一にしていたことから、米国の金利低下の長期化はJ-REIT価格にとってプラスに働くことになる。

つまり、新型肺炎の抑制が視野に入り、投資家がリスクオンへ動きを転じた時に、最も業績面への懸念が少なく利回りが確保できる投資先がJ-REIITとなる可能性があるのだ。このような点から東証REIT指数が2,000ポイントを割り込むことがあれば、積極的な投資を検討しても良さそうだ。

住居系銘柄が有望

なお前回のコラム「新型肺炎がホテル系銘柄に与える影響」で記載した通り、ホテル系銘柄の業績予想にはまだ新型肺炎の影響が折り込まれていない。したがって業績予想の下方修正があるまでは様子見とした方がいいと考えれられる。

その他の用途に関しては、商業施設の一部に変動賃料契約が締結されている程度であり、業績面へのマイナスインパクトが生じることはない。ただし、企業業績の悪化によって、オフィスビルでは賃料引き上げの動きが停滞する可能性がありそうだ。

さらに、業績面への影響は出ないと考えられるが、物流施設はその施設で業務に従事する従業員が新型肺炎に罹患した場合やサプライチェーンへの混乱に対して、投資家が懸念を持つ可能性も考えられる。

一方で賃貸住宅に関しては、新型肺炎に伴う悪影響への懸念を抱く投資家が少ないと考えられる。投資家が安定的な収益を求める動きを強めれば、住居系銘柄は用途別では有望な投資先となりそうだ。