・2020年初の金融政策決定会合が20、21日で開催された。結果は予想通り、物価見通しが引き下げられるとともにこれまでの政策が維持された。市場にもこの発表自体による影響は少なかった。
・昨年は、期初想定以上の金融緩和が行われた。今年は、日銀も含めて、金融政策に動きは少なそうだが、年初来、やや景気の下ブレリスクが意識されつつあり、市場金利も利下げ見通しがやや増加。
・銀行には利鞘低下と貸倒増加のダブルパンチ。近年は株主からの声も厳しくなっており、来年度の株主総会では抜本的な施策の説明が迫られる地銀が増えそうだ。
・先週SBIが筑邦銀行と3行目の資本業務提携を発表、今後も地銀では様々な施策が打たれるだろう。低PBRで資本が健全で、かつ高配当等の条件を満たす地銀には投資余地があるかもしれない。
2020年初回の金融政策決定会合:想定通りながら、ダウンサイドリスクを意識した文面
2020年初の金融政策決定会合が20、21日で開催された。結果は予想通り、これまでの政策が維持された(図表1)。為替は発表前から海外影響で円高に振れていたものの、発表による大きな影響はなかった。
四半期毎に発表される物価見通しも、前回から0.1ポイントずつ引き下げられ、20年度の見通しについては6回連続の引き下げとなった(図表2)。但し、実質GDP成長率については、見通しを引き上げた(20年度:+0.7%→+0.9%)。これは、主に政府の経済対策の効果であり、日本企業の本源的な生産性が向上しているわけではないため、持続性については注意が必要だ。日銀のコメントでも、「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」とされており、金融政策は引き続き、正常化よりは緩和の可能性が高い。
今年の世界の金利見通し:方向性がややばらけそうだが、足元では緩和予想が増加
昨年は年初に想定されていた以上に大きな金融緩和が行われたが、今年は、日銀も含め、金融政策の動きは少なそうだ。年末のスウェーデンの利上げにも見られる通り、若干方向性がばらける可能性があるものの、足元では、景気下振れの意識が高まっており、利下げ予想がやや増えている(図表3)。
これは、米中の貿易摩擦も中東情勢もひとまず沈静化したものの、引き続き景気鈍化懸念が根強いためだ。昨日発表されたIMFの世界の経済成長率予想では、2019年分を6回連続で引き下げ、2020年予想も全体に引き下げた(図表4)。特に、デモや金融機関の信用不安等で揺れるインドをはじめとする新興国の景気鈍化が目立つ。
一方、日本については、日銀と同じく政府の経済対策等で0.2ポイントの引き上げとなった。ただ、21年度には、鈍化が予想されており、21年の成長率は先進国中最低レベルとされている。とはいえ、オリンピック待ちの建設需要や、マイナンバーカードを使ったポイント還元策「マイナポイント」もスタートするなどから、日本の景気鈍化はIMF予想より緩やかになる可能性もある。
低金利継続下の銀行はどうなるか
マイナス金利のまま景気が鈍化した場合、銀行は利鞘も低下しつつ貸し倒れも増加するというダブルパンチを受ける。そのまま放置するなら地銀株は売りの一手だろう。
しかし、今年は長年の劣化から反転の萌芽が見られるかもしれない。先週、SBIが筑邦銀行との資本業務提携を発表した。同社の資本業務提携は島根銀行、福島銀行に次ぐ3行目となる。これまでの2行は時価総額ランキングで最低位の2行で、それぞれ100億円に遠く及ばない規模だったが、今回の筑邦銀行の時価総額は116億円と、これまでの2倍以上だ。(その分出資額は小規模で、これまでの島根、福島への各34%、19%(既存持分含む、グループのファンド含む)に対し、最大3%とされている。)
今後は、こうした小規模の銀行は、SBIとの提携に限らず、さまざまな形で再編等の抜本策を迫られるだろう。利鞘低下や貸し倒れの増加に加え、近年は株主からの声も厳しくなっている。例えば、四国銀行などは、19年6月の株主総会で、役員の解任などの株主提案を受けた。ROEの低さなどから機関投資家から賛成票が得られない経営陣も増えている。これらの地銀は、来年度の株主総会では、一層の改善を迫られるだろう。
これほど強いプレッシャーを受けたことは地銀史上あまりなかったと思われる。過去1年の株式のトータルリターンは銀行によっては大きくマイナスになっている。しかし、悪環境ゆえに戦略の転換を迫られる。PBRが極めて低いが、資本比率は相応に高く(例えば8%以上)、配当利回りも高い等の条件を満たす地銀には投資余地があるかもしれない。