2019年のマーケット振り返り

早いもので2019年も終わろうとしています。今年の金融マーケットは最初から最後まで米中の貿易戦争に振り回されました。少し今年のできごとや株価の動きを振り返ってみましょう。

2019年の日経平均チャート
(出所)マネックス証券ウェブサイト

昨年から米中の対立に伴う関税引き上げの影響が顕在化し、その影響を恐れたマーケットは昨年末に世界同時株安に見舞われました。ほぼ2万円ちょうどあたりからスタートした日経平均は徐々に値を戻し4月末時点では2万2000円近くまで回復しました。日本は令和を迎え10連休に入ったわけですが、連休の終盤に突如トランプ大統領が中国に対して再び追加関税をかけると表明しマーケットは混乱しました。再び日経平均は2万円台まで調整し夏場にかけて低空飛行が続きました。

秋口以降は米中の交渉が徐々に進展しているとの期待感から株価は上昇、12月に入って日経平均は年初来高値を更新して2万4000円台を回復しました。一時は米国や中国だけでなく世界的に景気が鈍化する兆しを見せるなど不安感が高まった時期もありましたが、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)が金融緩和に動くなどしたため景気は世界的に持ち直しの兆しを見せています。

今年パフォーマンスが良かった国や銘柄は?

今年株価パフォーマンスが良かった国はどの国だと思われますか?上述したとおり年初は非常に安いところから始まったので、下記の表に記載したすべての国・地域でプラスリターンとなっています。中でも最もパフォーマンスが良いのは米国のナスダック総合指数です。ダウ平均も+22.8%と好成績ですが、ナスダック総合指数との間では10%以上パフォーマンスに差がついており今年は米国IT企業のパフォーマンスが非常に良かったことが窺えます。

(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成 ※2019年は12月27日時点

日経平均も+19.1%とダウ平均に近いリターンで、堅調なパフォーマンスでした。その他にもドイツや中国、ブラジルなど先進国・新興国とも好リターンを記録しています。ただ、その中であまり冴えないのが英国と香港です。皆様ご存じの通り、英国はBrexitと呼ばれる英国のEU離脱問題、香港は中国政府と香港市民の対立によるデモの過激化という大きな政治混乱がありました。これらの混乱が投資家を敬遠させ少なからず株価パフォーマンスに影響があったのだろうと考えられます。

続いて日本企業で今年大きく上昇した銘柄、大きく下落した銘柄をご紹介します。以下の表は東証上場企業のうち今年の株価上昇率が高かった上位20社です。

2019年に大きく上昇した銘柄(東証上場)
(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成

上昇率上位を見るといずれもマザーズやジャスダックといった新興市場の銘柄となっています。上昇率1位のホープ(6195)は自治体の遊休スペースを有料広告枠にするビジネスを手掛けていましたが、電力販売事業に参入し業績が大きく好転したことが起爆剤となり株価は大きく上昇しました。上昇率2位のレアジョブ(6096)は本業のオンライン英会話サービスの業績が加速したことで大きく上昇しました。その他の上昇率上位の銘柄を見ても業績が大きく好転していることが株価上昇の理由になっていることがほとんどです。やはり企業のファンダメンタルズの変化こそが株価に最も大きな影響を与えるファクターなのです。

逆にパフォーマンスが悪かった銘柄をご覧ください。以下の表は東証上場企業のうち今年の株価下落率の大きかった20社です。

2019年に大きく下落した銘柄(東証上場)
(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成

下落率トップのMTGは「シックスパッド」の販売で知られる美容機器やトレーニング機器の販売を手掛ける企業ですが、売上高の大幅な減少や不適切な営業行為・会計処理を行っていたことなどで大きく下落しました。その他にも株価が下落した銘柄の多くは業績が大幅に悪化した銘柄です。下落率14位のペッパーフードサービス(3053)は「いきなりステーキ」の人気が高まったことで急激な出店拡大を行いましたが、人気が低迷し多数の店舗の閉鎖に追い込まれています。

筆者の2019年予想を振り返る

筆者は昨年も2019年の展望をこちらのレポートで記しました。レポートの趣旨は、
・2019年は米中貿易戦争の影響による世界的な景気後退に警戒
・守備の意識を強く持つ
・チャイナショックを参考に内需セクターを中心に銘柄をピック
というものでした。

秋以降の株高はやや予想外でしたが、その他の点は概ね見通し通りに推移したのかなと考えています。上記のレポートでは注目銘柄として25銘柄を挙げましたので、そちらのパフォーマンスもご紹介いたします。

2019年の注目銘柄として挙げた25銘柄の騰落率
(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成

上記のように25銘柄の平均騰落率は+30.3%となり、TOPIXの2倍近いパフォーマンスとなりました。また、特に注目として挙げた5銘柄のパフォーマンスは以下の通りです。

特に注目として挙げた5銘柄の騰落率
(出所)QUICKデータよりマネックス証券作成

特に注目の5銘柄はいずれもTOPIXのパフォーマンスを上回り、平均で+47.9%とTOPIXの3倍以上のパフォーマンスを達成することができました。我ながらちょっとは良いご紹介ができたのかなと思っております。

2020年のシナリオ・注目銘柄は

2020年は今年に比べると企業業績が改善し、株高傾向が強まるのではと考えています。その理由は世界的な景気の回復です。以下のグラフはOECD(経済協力開発機構)の景気先行指数です。今年に入って大きく低下してきましたが、ようやく底入れしつつあります。

    OECD景気先行指数の推移
(出所)OECD発表データよりマネックス証券作成

米国や中国の経済指標を見ても改善に転じているものが散見されますし、何より米中関係が改善し追加関税が撤廃方向に向かえば景気改善の後押しになるでしょう。基本的には景気回復→業績改善→株高というストーリーで考えています。

ただもちろんリスクもあり、中でも最大のリスクは米国の大統領選でしょう。現在米中は歩み寄っており、交渉は進展していますがトランプ大統領にとって来年最も優先度が高いのは自身の再選であり、そのためには米中関係も支持率を高めるためのカードとして使ってくる可能性があります。そのため突然追加関税をかける、といったことを言い出す可能性もありそのリスクには警戒しておくべきと考えます。

最後に2020年の注目銘柄をご紹介します。昨年と近い以下の条件で銘柄をピックアップしました。
スクリーニング条件
・東証上場銘柄
・直近期の経常利益率が10%以上と収益性が高い
・通期の足元5年間の経常利益が1度も減益になっておらず一定の成長性、安定性がある
・直近3四半期がいずれも前年同期比で増収経常増益
・予想PERが20倍以下と大きな割高感がない
・無配予想でない

上記の条件で銘柄をピックアップしたところ、ヨシックス(3221)、オープンハウス(3288)、パルマ(3461)、アイカ工業(4206)、クイック(4318)、太平製作所(6342)、北越工業(6364)、全国保証(7164)、住友不動産(8830)、エスリード(8877)、新日本建物(8893)、イオンモール(8905)、東海旅客鉄道(9022)、サカイ引越センター(9039)、ニッコンホールディングス(9072)、DTS(9682)の16銘柄が抽出されました。

 

中でも筆者は住友不動産(8830)、イオンモール(8905)、東海旅客鉄道(9022)、サカイ引越センター(9039)、DTS(9682)の5銘柄に特に注目しています。最後に5銘柄の概要をご紹介しますのでご参考いただければ幸いです。企業概要と業績推移の出所はマネックス銘柄スカウターです。  

住友不動産(8830)

■企業概要
住友グループの大手総合デベロッパー。東京都区内を中心にオフィスビルの開発・賃貸、全国規模の住宅開発(分譲マンション、賃貸マンション、戸建て住宅、仲介、建築工事請負)、商業施設の開発・運営。主力の賃貸オフィスでは「泉ガーデンタワー」「住友不動産新宿オークタワー」「新宿住友ビル」「渋谷インフォスタワー」「渋谷ガーデンタワー」など220棟超を運営管理。分譲マンションは5年連続年間供給戸数1位。傘下に住友不動産販売(2017年完全子会社化)を持つ。2015年「東京日本橋タワー」、2016年「住友不動産六本木グランドタワー」、2018年「住友不動産大崎ガーデンタワー」竣工。

■業績推移

 

イオンモール(8905)

■企業概要
日本最大の商業専業ディベロッパー。「イオン」を核テナントとする大規模ショッピングモールの開発、モール店舗賃貸、運営・管理(国内166モール、海外30モール、2019年8月)。都市型ファッションビルのショッピングモールOPAを傘下に持つ。イオンリート法人をはじめとするリートを活用した投資戦略を展開。その他、イオンリテールから商業施設の運営管理業務受託。中国・アセアン諸国への進出、既存モールの大規模活性化(リニューアル)推進、インバウンド対応(施設・サービス・機器システム)、デジタリゼーションに注力。2013年旗艦モール「イオンモール幕張新都心」オープン。2016年都市型ファッションビル開発・運営のOPAを完全子会社化、コミュニケーションロボット・ロボットシャトル走行を試験導入。主要取引先はイオンリテール。

■業績推移

 

東海旅客鉄道(9022)

■企業概要
鉄道会社、通称JR東海。東京・名古屋・大阪間を結ぶ日本の交通の大動脈である東海道新幹線、名古屋・静岡地区の都市圏輸送を中心に南関東・甲信地方など12線区の在来線を運営する旅客鉄道会社。東海道新幹線の運営を軸に鉄道事業、関連事業(流通・不動産・ホテル・旅行・広告業など)を展開。超電導リニアによる中央新幹線計画や海外高速鉄道プロジェクトへのコンサルティング事業を推進。日本車輌製造<7102>を子会社に持つ。2027年開通予定を目指し超電導リニアによる中央新幹線建設を着工。1999年名古屋のランドマーク「JRセントラルタワーズ」竣工。2017年名古屋駅新ビル「JRゲートタワー」竣工、新幹線のネット予約サービス「スマートEX」を開始。

■業績推移

 

サカイ引越センター(9039)

■企業概要
大阪・堺本社の引越専業会社、国内最大手の1社。パンダマーク「引越のサカイ」の愛称で知られ、北海道から沖縄県まで全国の営業拠点(全国157拠点・193支社)により引越トータルサービスを提供。単身者向け・家族向けには「らくらくコース」「せつやくコース」・ダスキンとコラボした「らくらくコース プレミアム」などを用意。法人営業(大型物件)の強化、インターネットによる受注を促進。その他、電気工事、クリーンサービス、リサイクルサービスを営む。2008年ダスキンと業務提携。2010年家電製品の新設・移設工事エレコンを子会社化。2016年クリーンサービスのSDホールディングスを子会社化。2017年リサイクルショップのキッズドリーム(兵庫)を子会社化。

■業績推移

 

DTS(9682)

■企業概要
ITサービス会社、(旧)データ通信システム。金融・保険・公共・情報通信・製造・小売分野を中心にソフトウェア受託開発、システム運営BPO、コンサルティング、パッケージソフトの設計開発等を営む。金融・保険(約30%)、法人通信・製造業向けのシステム開発と保守サービスが主力。ソリューション・サービス提供型ビジネスとアウトソーシング型ビジネスを強化。2014年組み込み開発の2社(横河ディジタルコンピュー他)を買収。グローバルビジネス基盤の確立のためベトナム拠点を活用。2017年データリンクスを完全子会社化(2018年合併)。2018年AI活用のマネー・ローンダリング対策製品を販売開始。主要取引先はみずほ情報総研。

■業績推移

 

最後に、本年もマネックス証券にご愛顧を賜り、また本レポートをお読みいただき本当にありがとうございました。まだまだ未熟ながら少しでも個人投資家の皆様のお役に立てるよう2020年も精一杯精進してまいりますので来年もどうぞよろしくお願いいたします。益嶋裕