2020年の為替相場は円安が広がると考えています。株高、リスクオンが広がるため、代表的な「安全資産」の円は売られる可能性が高いと考えているためです。米ドル/円は120円を超える可能性もあるのではないでしょうか。ただ、11月の米大統領選挙前後が円高への転換点になる可能性はありそうです。
11月大統領選挙にかけて円安の可能性
今年の米ドル/円は8月の104円から年末にかけて比較的大きく反発しました。これは、日米などの株価反発とほぼ連動したものでした(図表1参照)。この関係がこの先も続くなら、当面の米ドル/円の行方は株価次第でしょう。
株価は、米国株なども8月を境に急反発に転じました。この中で、FRB(米連邦準備制度理事会)は7~10月にかけて3回利下げを行いましたが、これは景気回復が続く国内要因とは別に、海外要因の悪影響の波及を未然に阻止するためなどの「予防的」「保険的」利下げとされました。
ところで、米国の「保険的」利下げの代表例の1つとされたのが1998年9~11月の利下げでした。同じような「保険的」利下げを行った1998年と、今年のNYダウの値動きを重ねてみると、比較的似た状況が続きました(図表2参照)。
さて、今年と比較的似た値動きが続いた1998年のNYダウでしたが、翌年にかけては一段高に向かいました。今年の値動きが似ていたNYダウが来年にかけても基本的に似た状況が続くなら、来年にかけて一段高に向かうという見通しになります。
この数ヶ月の米ドル/円は、そんなNYダウと連動してきました。この関係がこの先も続くなら、米ドル/円も来年は一段高に向かう見通しになります。
ところで、そんな米ドル/円は、2015年以降値動きの収縮が続きました。上値が切り下がり、下値が切り下がる、チャート的にはいわゆる三角保合いが形成されてきました(図表3参照)。
もしも、上述のように2020年にかけて株価の一段高に連れる形で米ドル/円も一段高に向かうなら、いよいよこの三角保合いをブレークする可能性が高まります。教科書的には、三角保合いをブレークすると、保合いスタート水準まで戻るとされます。保合いスタートは、2015年125円なので、来年の米ドル/円は120円を大きく上回る可能性も出てくるかもしれないわけです。
大統領選挙前後に円高へ急転換のリスク!?
それにしても、今年のように1998年に米国が「保険的」利下げを行った後、翌年の米国株は一段高に向かったわけですが、その似た状況が来年にかけて続くなら、NYダウは過去最高値を大きく更新し、3万ドルも通過点に過ぎず3万2~3000ドルに向かう見通しとなります。
1999年の場合は、米国株が軒並み過去最高値を大きく更新する中で、FRBは6月から利上げに転換しました。株高にブレーキを踏むべく断続的に利上げを行ったのです。
では、そんな1999年と似た形で、2020年の米国株が一段と上昇したら、FRBは利上げを行うことになるでしょうか。11月の大統領選挙前には、政治的には基本的に株安、景気引き締めをもたらす可能性のある利上げは難しそうです。逆にいえば、大統領選挙終了後は、利上げは「フリーハンド」を回復する可能性が高いでしょう。
もしも2020年のNYダウが1999年と似た状況が続くなら、11月大統領選挙前後には3万2~3000ドル程度になっている見通しです。これを52週MA(移動平均線)からのかい離率に当てはめると20%前後に拡大している計算になります(図表4参照)。経験的には、それは「上がり過ぎ」懸念が強い可能性を示すものです。そういった株価の状況で、利上げが行われるようなら、「上がり過ぎ」修正のかっこうのきっかけとなり株安リスクが広がる可能性が高いのではないでしょうか。
さて、4年に一度の米大統領選挙年の米ドル/円には、比較的よく知られた「アノマリー」があります。それは選挙前までは小動きが続くが、選挙後は一転して一方向に大きく動き出し、年初来高安値を更新するというものです。
もしも、これまで見てきたように11月大統領選挙前後で米国株が下落に急転換、リスクオフが広がるなら、米ドル/円も下落(円高)に大きく向かう可能性が出てきます。その中で「アノマリー」通りに、一方向へ大きく向かい年初来高安値を更新するなら、米ドル/円はそれまでの120円を超えた円安から、一転して年初来の円高値(米ドル安値)更新に向かう「大逆転シナリオ」に向かうことになります。
2020年の為替相場がそんな大波乱の展開になるのか、しっかりフォローアップしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。