年内の2大イベントで為替市場が大きく動く? 

通貨のオプション市場では、米ドル/円のIV(予想変動率、インプライド・ボラティリティ)がどんどん低下し続けています。IVとは将来の外国為替レートの予想変動率を表す数値のことで、将来の価格変動に対する市場参加者の期待度や需給が反映されます。

2016年にIVは16%台にまで上昇していたのですが、この3年間下落のトレンドが続き、足下では2014年7月につけた史上最安値水準である4%台にまで下落してきました。

IVの低下は米ドル/円の膠着感が強いことの表れでもあります。過去最低レベルにまで低下してきたということは、どこかで急反発するリスクも高まってきたと考えることができます。

3年続いてきた米ドル/円の膠着相場は、米国の大統領選挙を迎える来年2020年にはゲームチェンジ(※1)となる材料が出てくることで、大きなトレンド発生を見ることになるやもしれません。

来年、と書きましたが年内にも大きなイベントが2つ待ち構えています。これらの結果を受けて為替市場も大きく動き出す可能性も残されています。

12月12日(木)英国総選挙

投票締め切りは日本時間12月13日(金)の朝7時。この時間に出口調査の結果は出てくることで、ポンドが大きく動く可能性がありますが、接戦となった場合、東京時間午前中に五月雨式にヘッドラインが流れてくることとなります。

議会に参加しない北アイルランドのシン・フェイン党が7議席確保の見込みとなるため、650議席中322議席を獲得すれば単独過半数獲得となります。前回選挙でその精度の高さを誇った英世論調査会社ユーガブ(YouGov)の調査では、現状のところ保守党優位となっており、大きな波乱はないとの楽観的見方が大勢となっているようです。

保守党が勝利を手にすれば、EUとの間で取り決めた2020年1月31日の期限までに合意ありでのブレグジットが可能となることから、売り込まれてきたポンドの買い戻しが足元のトレンドとなっています。

しかし英国経済にとってブレグジットは決して良いことではないとして、選挙結果が出れば「材料出尽くし」となり、上昇してきたポンドが一転売り込まれるという見方もあるようです。

確かに、ブレグジットが経済に及ぼす影響は計り知れないでしょう。この選挙戦を戦う保守党と労働党は今後の英国の経済政策について議論を戦わせており、経済に悪影響とあれば巨額の財政支出計画が発表されるものと思っています。

ジャビド英財務相は、9月の議会演説で「緊縮財政の時代は終わった」として「過去15年で最も大幅な歳出拡大計画」を打ち出しています。

財政出動は金利上昇圧力となりますので、ポンドの上昇要因となってきます。総選挙で予想通り保守党が勝利し、材料出尽くしのポンド売りが出るようなら、テクニカル的な節目では押し目買いの好機と考えています。

ただし、保守党が負けた場合は、再びブレグジットの混乱が続くとの失望から新規のポンド売りも膨らむと思いますので、下落トレンド再開のリスクとなります。

ブレグジットの道筋として見えてきたものが白紙になれば、株式市場にも失望の売りが広がる可能性は否定できず、米ドル/円相場にも下落圧力となるリスクがあることにも留意しておかねばなりません。

12月15日(日)米国による対中追加関税発動

米中通商交渉は第1段階の合意が近いと繰り返し報じられているものの、いつ、どこで署名がなされるのかは不透明なまま。それでも米中対話が続いていることで、マーケットはこの問題よりもFRB(米連邦準備制度理事会)による緩和政策をテーマに、リスクテイクに動いているように見えます。

12月15日の対中追加関税発動も延期されるとの楽観的な見方がマーケットを支えているとするならば、延期されずに発動となった時には、一気に夢からさめたような下落に見舞われる可能性も。その場合、米ドル/円相場にも円高圧力が押し寄せることとなります。

年内、最後のヤマ場になると思われる今週の2大イベント。これで相場が動かない場合は、米ドル/円のボラティリティ上昇は来年に持ち越されることとなるでしょう。

 

少し早いですが皆様、良いお年を!

 

(※1)これまでのマーケットのテーマがガラリと変わること。膠着相場がマーケットの常態となった現在においては、きっかけとなるニュースがあればトレンド発生を生む可能性があるということ。