スマートスピーカーは全米家庭の3割で利用されていると言われている。アマゾン(NASDAQ:AMZN)のアマゾンエコーはスマートスピーカー市場の61.1%のシェアを占め、次いでグーグル(親会社はアルファベット NASDAQ:GOOGL)のグーグルホームが23.9%、残りの15%がその他だという。スマートスピーカーの歴史が最も長いアマゾンエコーを使っての生活体験を説明してみたい。
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アマゾンエコーに声をかければ音楽再生、ラジオ視聴などが手軽にできる
アマゾンエコーの最も人気のある使い方は手軽に音楽を聴くことだろう。アマゾンミュージックアンリミテッドの会員になると6,500万曲以上の音楽を自由に聴くことができる。
今までであれば、音楽を聴くためにはステレオのリモコンを探してスイッチを入れる必要があった。それが、今ではアマゾンエコーがある部屋で椅子に座ったまま「アレクサ、テイラースウィフトの音楽をかけて」などと言うだけで曲の再生を始めてくれる。
ラジオ放送でもそうだ。「BBCラジオをつけて」と言うとクリアな音質で英国BBC放送を流してくれる。筆者は中学生の当時、短波ラジオで雑音の中海外のラジオ放送を探し、聞いていたものだが、その当時と比べると感動ものである。
ベッドに入り疲れた時には、「波の音を聞かせて」とか「リラックスする音楽をかけて」などもごく普通にできることだ。
料理などの際に、5分経ったら知りたいという場合、今までだとタイマーをセットする必要があった。それが「5分経ったら教えて」だけでいい。
音声検索やタクシー配車の他にアマゾンに商品注文も
暇であればアレクサはクイズの相手もしてくれる。ちゃんと会話が成立する。
「ニューヨークから東京までの飛行機のチケットの値段を教えて」と言うと行き帰りの曜日を聞いてきた、直行便だといくら、乗継便だといくらと値段を教えてくれる。
日本ではまだそこまで行かないと思うが、米国では2020年には検索作業の50%が音声によって行われるとの調査もある。自宅における調べ物の多くがアマゾンエコーのようなスマートスピーカーによって行われていくのだろう。
子どもがいる家庭では、晩ご飯の準備ができると母親が子どもたちに大声で「ご飯よ!」と呼びかけるのが毎日行われているだろう。だが、子どもの部屋にもアマゾンエコーがあると、わざわざ子どもたちの部屋に行かなくとも台所から子どもたちに晩ご飯の時間だと知らせることができる。
アマゾンエコーには同時にアナウンスできる機能があり、同じアカウントでログインしたアマゾンエコーにメッセージを一斉放送できるのだ。
もちろん、子どもたちがそれだけで言う事を聞くか否かは別の問題だが。
AIアシスタントのアレクサに、タクシーを呼んでもらうこともできれば、アマゾンから洗剤を届けてもらうことも音声で指示できる。
出前の注文もアレクサに頼めばよい。
米国で早い段階に音声注文の意義を理解したのが大手ピザチェーンのドミノピザだ。 ドミノピザは、2017年7月からアマゾンエコーを使って、ピザの注文ができるようにしており、注文したピザの確認から、ピザの配達状況も音声で確認できる。
昔、ラーメン屋の配達が遅い場合、電話で問い合わせるといつかけても「今出ました」というような冗談話は過去の話となった。
米国では、スマートスピーカーを所有している4人に1人が音声で商品の注文を行ったことがあるそうだ。
27%の回答者が「手を使わずに注文できるので便利」と答えるその一方で18%が「使うのは嫌だ」と答えている。また9%が「音声で注文することを自然に感じる(違和感がない)」と答えている。
IoTで様々なデバイスを音声コントロールできるように
株価情報も音声で入手できる。宣伝のようで恐縮だが、先週12月6日、マネックス証券ではアマゾンエコーを使い音声でETFの買付と注文約定の照会ができるようになったと発表した。音声で株が買えるとは国内初の試みである。
将来的には「アレクサ、XX株をXX円でXX株買って。買ったら、XX円の指値をヒットしたら全部売って」など、ちょっと面倒な注文も音声で可能となるのだろう。
IoT(モノのインターネット)という全てのモノがネットにつながる世界の応用編だ。ネットでつながったデバイスをアレクサ経由で、音声でコントロールできる。
アレクサと連携できるアメリカの電気機器は「ALEXA ENABLED」(アレクサが使えます)というロゴがついており、28,000ものスマートホームデバイスと接続されるようになった。
IoT技術の発達のおかげで次の展開がやってきた。様々なデバイス(電気機器)をアレクサで経由させ、音声でコントロールすることが可能となっている。
朝起きて「アレクサ、おはよう」と言うと、「おはようございます」と答えた次はまず今日のスケジュールや天気を教えてくれる。その次はテレビの電源を入れてくれ、ニュース番組をつけ、同時にエアコンを最適な温度に調整し、コーヒーメーカーのスイッチを入れてくれるという展開が起きる。
アメリカでは、自宅の電話とつなげる機器が発売されており、アレクサを使って普通に電話がかけられ、アマゾンエコーのスピーカーを使っての会話が可能だ。玄関のドアの鍵のかけ忘れも、音声で鍵をかけることも可能だ。「掃除して」と言うとルンバが動き出し、床掃除を始めてくれる。
マンションの入り口には、アマゾンのセキュリティカメラが設置してあり、ドアが開き、人の気配を感じるとセンサーにより自動的にアマゾンのクラウド上にその動画が保存され 「アレクサ、玄関の様子をテレビに映して」と言うと、テレビの画面で確認することができる。
寝る前の寝室のライトも「アレクサ、電気消して」、または、夜中にライトをつける場合も「アレクサ、電気をつけて」。 クリスマスの時期、クリスマスツリーのライトも音声でつけたり消したりできる。
これらは、全て我が家の至るところに置いてある10台のアマゾンエコーにデバイスを接続して実証済みであり、できるらしいという話ではない。
スクリーン搭載型でレシピ動画を見ながら食材を音声で注文も
次世代のエコーにはスクリーンが搭載されているので、アマゾンが会員向けに提供しているアマゾンプライムの映画やミュージックビデオの鑑賞、離れた家族と顔を見ながらのやり取りも可能となった。
米国では、Food Networkと提携し有名シェフがおいしい料理の調理法を分かりやすくアマゾンエコーのモニター画面付きエコーで提供する試みを始めた。
「アレクサ、麻婆豆腐の作り方を教えて」と言うと、有名シェフが動画で料理の方法を説明してくれるが、動画の「再生」だけでなく、「10秒前に戻して」「豆腐の量は?」なども音声でできる他、麻婆豆腐の材料もアマゾンフレッシュ(アマゾンの食料品配達サービス)にそのまま音声で注文することができる。
アレクサの声を有名な俳優の声で対応させるという試みも始まっている。オスカー俳優のサミュエル・ジャクソンの声がアレクサとして対応するそうだ。
アレクサが感情を持ち、私たちに積極的に話しかけてくる未来
今までは全てのリクエストの前に「アレクサ」と言わなければならなかった。今までは「アレクサ、今の気温は?」、「アレクサ、今日は雨が降る?」が必要だったが、これからは「今の気温は?」「今日雨降るの?」と常に「アレクサ」というコマンドを入れなくてもよくなるようだ。
最近発表されたニュースでは、アレクサは感情を持つようになり、喜ぶと悲しむという感情をそれぞれ3つのレベルで表現できるようになるそうだ。たとえば、ユーザーがお気に入りの野球のチームが勝つとすると、そのニュースをエキサイトしながら伝える。アマゾンの調査では、アレクサが感情を持って対応すれば満足度は3割アップするという。
アマゾンエコーを開発した技術者によると、アレクサが私たちの生活のどこにでもいて、私たちのニーズを事前に察知させることが夢だという。今までの受け身の対応だけでなく、積極的に私たちに話しかける展開を目指し、アレクサのAI能力を数年以内に飛躍的な進化を遂げるのを目標としている。
例えば、土曜日の映画館の予約を入れるとする。次は、夕食の予約を入れますかとか、ウーバーで迎えの車を呼びましょうか、などと質問するような展開となるのだが、映画の上映の時間が決まれば、自宅から劇場までの道路の込み具合を考慮した時間を考え、ウーバーが何時に自宅に到着すればよいか、そのプロセスをアレクサが考え、提案してくれるようになる。
将来的には、カメラとスピーカーを搭載し部屋の中を歩き回るアマゾンエコーの研究も行われていると聞く。アレクサには口だけでなく目がついて、ますます私たちの生活の一部になっていくのだろう。
このような展開は決してIF(もしも)ではなく、WHEN(いつ)であり、私たちが子どもの頃に見たSF映画の世界がより現実的なものとなっていく。