調整局面が続く中国株
11月下旬の中国株ですが、引き続き軟調な株価推移が続いています。
しかし、米中通商協議への懸念が後退したことで、一時的に株価が上昇する場面もありました。それは、(1)中国政府が知的財産権保護の強化を表明したこと、(2)オブライエン米大統領補佐官が年末までに中国と「第1段階」の通商合意に達する可能性はあるとの認識を示したこと、(3)トランプ米大統領が中国と貿易合意を取りまとめる「可能性は非常に高く、非常に近い」とコメントしたこと、などを受けてのものでした。
しかし、トランプ米大統領が「香港人権・民主主義法」に署名したことで再び米中通商協議への懸念がぶり返してしまい、11月29日(金)には株価が大きく下落しました。香港ハンセン指数は出来高を拡大させて50日移動平均線を下に大きく突き抜け、上海総合指数も下落基調が鮮明になってきています。
日本株や米国株が米中通商協議への楽観的な見通しによって堅調な株価推移となっているのに対して、中国株が軟調な株価推移となっている理由はいくつかあると思います。
まず1つは香港のデモ活動に収束の兆しが見えないことです。11月24日に行われた香港の区議会議員選挙では、民主派が圧勝したことから、とりえずデモが鎮静化するのではないかとの期待もあったのですが、林鄭月娥(りんてい げつが)長官が市民の要求に応じない姿勢を表明したことから、市民からは不満が噴出しています。
選挙後、初の週末となった11月30日(土)~12月1日(日)には警察と抗議デモ隊との衝突で再び催涙弾が発射されるほどの事態となり、デモはむしろ激化していると言っても良いでしょう。トランプ米大統領が「香港人権・民主主義法」に署名したこともデモの追い風になっているようで、香港のデモは収束が見えない状況がまだ続きそうです。
中国の経済指標には明るい兆しも
中国株が軟調なもう1つの理由は中国経済のスローダウン懸念です。10月の固定資産投資や鉱工業生産、小売売上高が市場予想を下回ったことは前回お伝えしましたが、11月27日に発表された10月の工業部門企業利益は前年比9.9%減と9月実績の5.3%減から更にマイナス幅を拡大させています。
もっとも、ここに来て明るい指標も出てきています。11月30日(土)に発表された11月の中国国家製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.2と、市場予想の49.5や10月実績の49.3を上回りました。景況感の境目である50を上回ったのは7ヶ月ぶりとなります。
米中通商問題の影響から引き続き輸出は冴えなかったのですが、中国政府による景気刺激策で国内消費が上向きました。新規受注指数は51.3と4月以来となる50超えとなっています。また、中国国家非製造業購買担当者景気指数(PMI)も54.4と、市場予想の53.1や10月実績の52.8を上回る強さとなっています。
アリババが香港ハンセン指数に採用されるのは12月9日から
また、香港ハンセン指数について言えば、アリババが上場してきたことも軟調な要因の1つでしょう。アリババは時価総額では4.2兆HKDとなり、テンセントの3.2兆HKDを大きく上回りますが、ハンセン指数の組み入れは12月9日からとなりますので、資金がアリババに移動しているということも指数が軟調な要因と言えるでしょう。
ただ、長期的に見れば、アリババがハンセン指数の構成銘柄に含まれれば、アリババ、テンセント、テンセント傘下の美団点評といった中国のプラットフォーム企業が指数を牽引していく形となり、香港ハンセン指数の躍進材料になると思います。中国でも経済のデジタル化が加速している状況で、新たな経済的価値を創り出すのは、AIをはじめとする新テクノロジーを活かしたこれらの企業であるのは中国でも変わらないでしょう。
以上、軟調な状況が続く中国株ですが、アリババが指数に採用され、弱い経済指標を背景に中国政府が予想以上の景気刺激策を打ち出してくる、あるいは、米中通商協議で進展があるなどすれば、株価は割安なだけに、年末までに上昇トレンドに戻れる可能性は十分残っていると思います。株価が大きく下がる場面があれば、購入を検討して行きたいところです。