1998年の米国株のアナロジー

11月に入り一気に109円を超えてきた米ドル/円でしたが、先週は上昇一服となりました。これは、連動性の強い日米株価が、米国株こそ、週末に最高値更新となったものの、日経平均などは上昇一服となったことに連れた面が大きかったのではないでしょうか。

このように、この数ヶ月の米ドル/円の動きを比較的うまく説明できるのは日米株価でした(図表1参照)。その関係がこの先も続くなら、米ドル/円の行方は日米などの株価次第といえるでしょう。では、その株価はこの先どう動くのか。

【図表1】米ドル/円とNYダウ(2019年7月~)
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

これまで何度か紹介してきたように、今年の米国株の動きは、1998年に比較的よく似た状況が続きました(図表2参照)。今年7~10月にかけて3回連続でFRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを行ったことは、「保険的利下げ」と呼ばれましたが、1998年の9~11月の利下げも、「保険的利下げ」の代表例とされるものです。似たような、金融政策が展開した中で、米国株も似たような動きが続いたわけです。

【図表2】2019年と1998~1999年の NYダウ

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

さて、今年と似た動きとなった1998年の米国株、NYダウは、「保険的利下げ」は3度で終了しました。それを受けて、NYダウは最高値を更新したのですが、そんな株高も11月で一段落、改めて最高値を更新したのは年明け以降となったのです。

なぜ、1998年は11月で米国株も上昇一段落となったのか。それは、さすがに短期的に「上がり過ぎ」となった影響が大きかったのではないでしょうか。1998年のNYダウは8月安値から11月高値まで、約3ヶ月で2割を大きく超える上昇となっていたのです。

3ヶ月連続、電光石火のFRB「保険的利下げ」により、米国株は急回復に転じ、一気に最高値更新となったわけですが、さすがに3ヶ月で2割以上の急上昇がそのまま続くには無理があったのでしょう。折しも、年末に近付くタイミングだったこともあり、本格的な上昇相場は、年明けまで「一休み」となったのではないでしょうか。

これに対して今年のNYダウの場合、8月安値からの上昇率は1割程度にとどまっていますから、これまでみてきた1998年のケースに比べると短期的な「上がり過ぎ」懸念は強くないでしょう。ただ、年末が近づくタイミングという点では、1998年の「保険的利下げ」終了後と同じです。その意味では、本格的上昇相場は年明け以降になる可能性もあるかもしれません。

そんな米国株と米ドル/円の似た値動きがこの先も続くなら、米ドル/円の本格的上昇も年明け以降といった具合にもう少し先になる可能性もあるでしょう。ちなみに、図表3は今年7月以降の米ドル/円に、1998年7月以降のNYダウを重ねたものです。米ドル/円=NYダウ(7月以降)、2019年のNYダウ=1998年のNYダウなら、米ドル/円=1998年のNYダウとなるはずです。

【図表3】2019年7月以降の米ドル/円と1998年7月~1999年のNYダウ
出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

図表3のように、1998年以降のNYダウの値動きを参考にすると、この先の米ドル/円は、年末にかけて109円前後の一進一退が続き、年末年始頃から110円を大きく上回る一段高に向かうといった見通しになります。年初来の米ドル/円高値、112円台を年内更新できるか、それとも「少し先」になるか、ちょっと微妙な感じかもしれません。