1月14日、中国人民銀行(中央銀行)は1月20日より、金融機関の預金準備金率を0.5ポイント引上げると発表しました。今回の調整は2010年以降7度目の調整です。2010年、中国の人民元新規貸付額は2009年より7.95億元増となり、7.5億元増の目標を上回っています。流動性抑制のため、中央銀行はここ2ヶ月で複数回の預金準備金率の引き上げを行っています。今回の調整によって、約3500億元の流動資金を凍結することになります。預金準備金率はすでに過去最高水準になっていますが、更に引き上げられる可能性が高いと思います。

しかし、その一方で、預金準備金率の引き上げは根本的に流動性の抑制とインフレ抑制にはなりませんので、いずれ利上げも実施されるでしょう。2010年は10月と12月に2回の利上げが実施されました。次回の利上げは1~2月の物価上昇率を見て判断されることになるでしょう。しかし新年と旧正月の影響で、1~2月のインフレは一層高まる見込みです。中国国家統計局が発表した「50都市の主要食品価格変動状況」によると、1月上旬の野菜価格は2010年12月末より明らかに上昇しています。例えば、サヤインゲン、青梗菜、キュウリの価格は1月に入ってからの10日間でそれぞれ13.4%、9.2%、7.3%上昇。そのため、次回の利上げは旧正月(2月初)前後に実施され、2011年通期では2~4回の利上げとなるだろうとの予想もあります。

当然ながら、預金準備率の引き上げや利上げは株価にはマイナスに働きます。実際のところ中国本土や香港H株は世界の株式市場が堅調な割には軟調な株価推移となっています。そこで、注目したいのは香港の地場企業です。2011年1月に入り、1週間ほど香港に行き、企業訪問をしてきましたが、香港は中国経済の堅調な成長に支えられて好景気です。例えば、今回、高級紳士服の販売を手がける香港の上場企業に訪問しました。同社は中国と香港でブランド紳士服の販売店舗を運営しているのですが、2010年上半期の既存店売り上げの成長率を見てみると、中国の店舗は前年同期比で+15.2%であるのに対し、香港は+30.9%と大きく伸びているのです。この理由について聞いてみると、香港の店舗の売り上げの60%は中国の旅行者によるものだからとのこと。2010年上半期、香港への中国の旅行者は30%程度増えており、その恩恵を享受できたというわけです。同社が扱っているような高級紳士服ブランドは、中国本土の店舗で買うよりも香港の店舗で買う方が25%~35%安いのです。だから、中国の旅行者は香港に来てこのような高級品を買います。これは一例で、紳士服だけでなく、時計や化粧品やジュエリーなども中国の旅行者はたくさん買って行きます。実際のところ、ジュエリーショップに入ってみたら、中国からの旅行者で一杯でした。

このように香港は中国経済の成長をストレートに享受できる立場にあって好景気なのですが、では、香港が中国と同じように金融引き締めに動いているかというと、確かに動いてはいるのですが、中国ほど厳しくはありません。なぜなら香港ドルは米ドルとペッグしているため、香港の金利は米国の金利に連動するからです。つまり、現在の香港は中国の成長の恩恵を受けて好景気なのに、金利は米国に連動しているため低金利なのです。この状況は経済と株価が拡大しやすいことを意味しています。これは1993年に香港株が大きく上昇したときとまったく同じ状況です。