香港ハンセン指数は「逃亡犯条例」改正案撤回で急騰も、その後に下落
9月の中国株ですが、9月4日に香港行政長官が「逃亡犯条例」改正案を撤回との報道や財政投資拡大や金融緩和の指針が示されたことから、同日の中国本土株、香港株は共に急伸しました。
その後も堅調な株価推移が続いていたのですが、サウジアラビアの石油施設が攻撃され、原油価格が急騰したことをキッカケに、9月13日をピークにその後は調整が続きました。香港ハンセン指数は再び50日移動平均線を下に突き抜け、9月4日の急騰前の株価水準まで戻ってきているところです。
「逃亡犯条例」改正案は撤回されたものの、香港のデモは収まりません。また、香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政長官が2019年第3四半期の香港のGDPはマイナス成長になることが必至だと発言し、これらも株価を重くする原因となっています。
米中通商協議は先行きに不透明感
米中通商協議については中国の劉鶴副首相が通商交渉のため、10月の第2週に訪米するとも伝わるなどの進展がありました。一方で、9月27日(金)にはトランプ米政権が対中証券投資の制限を検討と、再び交渉を前にハードな攻撃に出るなど、先行きには不透明感が出てきています(なお、9月28日(土)に米財務省は中国企業の米市場への上場を阻止する計画は現時点でないとコメントしています)。
中国の経済指標を見ると、8月のCaixin中国製造業購買担当者景気指数は50.4と、市場予想の49.8や7月実績の49.9を上回りました。貿易摩擦で輸出は厳しいものの、中国政府のインフラ投資拡大によって製造業の景況感が改善しました。
しかし、このような良い数値が出る一方で、景気失速を示す数字も出ています。8月の鉱工業生産は4.4%増と市場予想の5.2%や7月実績の4.8%増を下回り、小売売上高も7.5%増と市場予想の7.9%増や7月実績の7.6%増に届きませんでした。8月の輸出も2.6%増と、市場予想の6.3%増や7月実績の10.3%増を下回っています。
経済指標悪化も、中国の景気は下支えされる見通し
このような経済のスローダウンに対応するため、中国政府も景気対策を続けています。9月4日に行われた国務院常務会議では、今後の政策について方針が示されました。「6つの安定(雇用、金融、貿易、外資、投資、景気予想)」政策をしっかりと行うという点や地方政府が積極的に特別債券を発行して投資を行い、内需を補強するといったことが示されました。
その政策方針に従って9月6日には預金準備率が引き下げられました。以前から何度も指摘していますが、米中の貿易摩擦は単なる関税の掛け合いではなく、長期の覇権争いなので、中国としても負ける訳にはいきません。そのためにも米中通商協議では譲らない姿勢を続ける一方で、自国経済を悪化させるわけにはいきません。
自国経済が悪化してしまえば、国民や政敵などからの反発を受けて結果的に米中通商協議でも、ある程度の妥結をせざるを得ない状況となってしまいます。したがって、中国政府は今回の対策でも景気が下げ止まらない場合は追加の財政投資拡大や金融緩和を行ってくると思われます。結果として弱い経済指標が出ているものの、中国経済は下支えされるでしょう。
トランプ米大統領は何らかの譲歩案を示すか
ところで、10月1日は1949年の建国以来70周年を迎える国慶節で中国では軍事パレードが予定されています。共産党はここで支持を固めるためにこれまでの政策についてのアピールをしてくるものと思われます。そして、その後に米中通商協議が再開されます。
強気な姿勢を見せるトランプ米政権ですが、中国ほどではないものの、米国経済の指標もスローダウンが確認されています。また、トランプ米大統領自身の弾劾調査開始といった悪材料もあります。そのため、来年の選挙に向けて何らかの譲歩案を示してくる可能性もあろうかと思われます。