中国では2009年後半から急激に不動産価格が上昇したため、2010年上半期から不動産市場の引締め策が採られました。これによって不動産市場全体の取引量は成長鈍化しているのですが、主要大手企業の販売実績は好調です。ここで中国の主な不動産企業の2010年1-11月の販売金額と、年間販売目標を見てみましょう。
■2010年不動産企業の1-11月の販売金額 (単位:億元) 2010年 販売金額 販売目標 達成率
万科企業(*200002) 999 800 125%
保利地産(A株上場) 583 500 117%
中海発展(0688) 519 500 104%
緑城中国(3900) 462 670 69%
恒大地産(3333) 457 400 114%
碧桂園 (2007) 299 300 100%
龍湖地産(0960) 267 248 108%
富力地産(2777) 263 300 88%
雅居楽(3383) 249 240 104%
金地地産(A株上場) 233 210 111%
華潤置地(1109) 190 200 95%
復地集団(2337) 125 115 109%
招商地産(*200024) 107 150 71%
*は深センB株上場 その他はA株上場を除き香港市場上場 出典:「毎日経済新聞」
多くの大手企業は11月までに通期の販売目標を大きく超えてしまいました。最大手の万科企業と恒大地産は4月の政策発表以降は値下げを行って積極的に販促活動を行ったことで予定を大きく上回る販売ペースとなっています。また両社とも以前にも増してハイスピードで開発から販売まで持っていく方針を強めており、先に土地だけ手当てして、長らく開発をしない、あるいは完成した物件を値上りするまで販売を遅らせる、ということを避けています。このため現在のような不動産引締め策が実施されている状況では、回転効率が良いことが強みとなってきている様子です。一方、緑城中国は引締め策の中でも値下げをせず、逆に値上げもしていたようで、販売額は通期目標を大きく下回っています。 基本的に中国全体の不動産販売状況に比べ、大手企業は好調です。そして、大手の業界シェアは着実に上がっています。もともと最大手の万科企業でも全国シェアは2%もなかった状況から、現在万科企業のシェアは2%を超えてきており、2位の中国海外発展も進出地域を広げ、3年前まで0.7%程度だったシェアが倍増近くにまでなってきています。ただでさえ大手企業にシェアが集中していく中で、金融引締めが実施されていることによって、資金力のある大手はさらに有利に開発を進めることができます。2010年11月の消費者物価指数が5%を超えたことを受け、中央銀行は預金準備率を過去最高レベルにまで引き上げ、これで引き上げは1ヶ月間で3度目となるほど市場から資金を急激に吸収しています。このことで銀行が融資できるお金は減るので、体力のある企業のみが資金力にものを言わせ、住宅開発を続けていくことができるのです。つまり、大手のシェア拡大は今後も続きそうです。