自筆証書遺言の紛失や改ざんを防ぐ保管制度
せっかく遺言を作成しても、遺言者がその遺言を紛失してしまったり、相続人に見つけてもらえなかったりする恐れがあることから、自筆証書遺言を法務局が保管する制度が創設されました。
遺言を自筆作成したうえで自らが法務局へ赴いて保管申請を行います。法務局は原本を預かると同時に、災害等による消失の恐れを回避するため画像を保管します。遺言者に相続が起きると、相続人、受遺者及び遺言執行者等は法務局に対してその遺言書の画像情報の交付を請求することができることになりました。
法務局が遺言の原本とあわせて画像データを保管するため、紛失する恐れが無くなったのと同時に、遺言の記載内容について改ざんされる恐れもないことから、検認手続も不要です。
機動的な相続手続きが可能に
従来、自筆証書遺言を大事に保管しようとするあまり、銀行の貸金庫にて保管して相続が起きたため、銀行取引が凍結されて遺言の取り出しに数ヶ月を要してしまうといったことも起きていました。
このような心配はこのたびの改正による法務局による保管制度を利用すれば解消されるものと思います。また現在、遺言の検認手続きは1ヶ月~2ヶ月待ちになることも多く、これが不要となったことにより機動的な手続きが可能となりました。
保管制度には内容や有効性のチェックはない
ただし、次の点には注意が必要です。
遺言書の保管制度については、法務局は要式チェックはするものの、内容や有効性のチェックはしません。経験上ですが、自筆でかかれた遺言は、第三者が読むとその内容があいまいなことも多く、この場合、結局、遺産分割協議をせざるを得ないこととなり、かえってトラブルのタネになってしまうこともありました。
また、この保管制度は有効性のチェックはしないので、前述したような遺言の内容に納得のいかない相続人から、遺言作成時に認知症であり脅されて作ったなどでその遺言は無効であるといわれる従来の問題点については解決がなされておりません。
相続後このような問題点が生じる恐れがあるようでしたら、やはり公正証書遺言を作ることを強くおすすめします。
今回は、注目の遺言制度の改正について説明しました。次回は特別寄与料についてご説明します。