11月22日の回で医薬品企業についてご紹介しましたが、 (11月22日バックナンバー→ http://lounge.monex.co.jp/pro/imakoso/2010/11/22.html) 11月30日に医薬品企業株全般に激震が走りました。同日、中国国家発展改革委員会(以下、発改委)が12月12日より、一部の医薬品の小売価格上限を平均19%引き下げると発表したのです。今回の対象医薬品は政府が定価を決めている医薬品ではなく、企業が単独で定価を決めている医薬品で、薬種は抗生物質、心臓・脳血管治療薬などの17種類です。この発表後、製薬株は全般的に急落しました。たとえば政策発表の翌日、聯邦製薬の株価は前場比9.8%安の14.44香港ドルにまで下落。中国製薬(1093)の株価も大きく下落。影響があまりないと見られる山東羅欣薬業(8058)も下落したり、山東威高(1066)のような値下げ策に全く影響されない医薬用品株、利君国際(2005)、四環薬業(0460)のような外資企業の医薬品の値下げで恩恵を受ける可能性のある銘柄も、医薬セクターの全体調整とともに株価が下落しています。
ところが、政策の内容をよく見てみると、実際には今回の政策は中国医薬企業への影響は限定的だと予想されます。まず、対象医薬品のほとんどは外資企業が生産する価格の比較的高い医薬品で、外資企業40社の107種の医薬品に影響します。その一方で、本土医薬メーカーの扱っている医薬品はそれほど対象になっていません。そして、今回の値下げは、あくまでも価格上限に対する値下げです。ところが、値下げ対象となった製品は、実際の小売価格はもともと上限以下であるため、業績への影響幅は値下げ幅より低くなります。また、今回の値下げは出荷価格ではなく、小売価格を対象にしたため、値下げ分の損失を製薬メーカーだけが負担するわけではありません。
具体例を見てみましょう。たとえば、今回の政策では聯邦製薬(3933)と中国製薬(1093)の製品が値下げ対象製品となっています。聯邦製薬によると、自社の一部の製品が発改委の値下げ政策の影響を受け、関連製品の最高小売価格は平均13%下がります。しかし、13% の値下げは医薬品メーカー、代理企業、病院また小売企業が共同で負担するもので、政府部門の値下げ政策は同社の業績に大きな影響をしないとしています。たとえば、今回の値下げ対象製品となった主力製品であるアモキシシリンを例としてみると、そもそも同製品の出荷価格は従来の価格上限より10%程度安価な水準なのです。ある外資系証券会社は今回の値下げ政策は聯邦製薬の売上に2000万元以下の影響しか与えないと予測しています。聯邦製薬の2010年上半期の売上は30.8億香港ドルですから、影響は小さいものであるということです。
今年に入ってから医薬セクターは大幅に上昇してきたため、今回の発表は利益確定売りを誘った側面があると思います。聯邦製薬(3933)などは前述のように影響が小さいことがわかったため、発表前の水準まで既に株価は反発しています。中にはまだ戻していない銘柄もありますけれども、前述の理由から大きな心配はいらないと思います。