投資法人みらいとの合併内容
5月と6月に当コラムで解説(※1)したさくら総合リート投資法人(証券コード3473、以下、さくらREIT)の合併に向けた動きが大詰めにさしかかってきた。
本合併は、5月10日にスターアジア不動産投資法人(証券コード3468、以下、スターアジアREIT)のスポンサーであるスターアジアグループ(以下、SAG)がさくらREITに対して敵対的買収提案を行ったことから始まった。
さくらREIT側は、対抗策として7月19日に投資法人みらい(証券コード3476、以下、みらいREIT)との合併に関する基本合意書を締結。8月5日にみらいREITとの合併契約締結と合併条件(※2)を公表した。
合併条件の概要は、みらいREITとさくらREITの合併比率を1:1.67とし11月1日にみらいREITを存続投資法人とするもの。合併後のみらいREITの1口当たり分配金は2020年4月期(第8期)に1,600円、2020年10月期(第9期)に1,640円(※2)としている。
さくらREITの当期(2019年12月期)の1口当たり予想分配金は2,427円であるが、合併後のみらいREITの第8期と第9期の分配金をそれぞれ1.67倍する(※3)と2,672円、2,738円となる。この点で見れば、さくらREITの投資家にとって合併後の分配金は増加することになる。
なお、本合併では資産運用会社の合併は予定されていない。言い換えれば、さくらREITのスポンサーはREIT市場から撤退するという「対価」を払って、敵対的買収ではなく合意された合併を選んだ形になっている。
スターアジア不動産投資法人との合併内容
上記の合併条件の提示を受けて、SAG 側は8月7日に想定合併比率を公表した(※4)。さくらREITから見れば、SAG側は敵対的買収となっているため、両社は合併のための協議を行っていない。
したがって外部専門家(一般的には証券会社が行う)ではなく、あくまでもSAG側が試算した数値ベースでの合併比率だ。具体的にはスターアジアREITとさくらREITの想定合併比率を1:0.88以上としている。また合併後のスターアジアREITの予想分配金を2,886円としているため、想定合併比率である0.88倍以上から算定すると2,539円以上(※3)となる。
この点では、スターアジアREITとの合併でもさくらREITの投資家の分配金は増加することになる。
また単純に8月7日時点の価格をベースとすれば、SAG側の方がさくらREITの資産を高く評価していることになる。
具体的にはさくらREITの価格は、スターアジアREITの価格114,700円から想定合併比率の0.88倍以上とすると100,936円以上となるが、みらいREITの価格57,300円を合併比率の1.67倍しても95,691円にしかならない。
ただし、この差異は計算式で示した通り今後の価格次第で変化することになる。例えばスターアジアREITの価格が変化せず、みらいREITの価格が60,440円まで上昇した場合には、さくらREITに対する評価額は同程度となる。
さくらREITがどちらの投資法人と合併することになるかは、8月30日に開催される投資主総会でその帰趨が決まることになる。従って次回のコラムでは、それぞれの合併提案内容について留意すべき点を記載する予定としている。
(※1)「スターアジアグループがさくら総合リートの投資主へ合併提案」(2019年5月23日掲載)、「スターアジアグループが提示する合併のメリットとさくらREITとの対立点」(2019年6月13日掲載)
(※2)2019年8月5日付「投資法人みらい及びさくら総合リート投資法人の合併契約締結に関するお知らせ」、「投資法人みらい及びさくら総合リート投資法人の合併後の2020年4月期及び2020年10月期の運用状況及び分配金の予想に関するお知らせ」に拠る。
(※3)端数投資口は、合併後に投資法人側によって売却され投資家に払い戻されるため、さくらREITの投資家が合併後の分配金として受け取れる金額は保有投資口数によって異なる。
(※4)2019年8月7日付「スターアジアグループによる「さくら総合リート投資法人とスターアジア不動産投資法人との合併に向けたご提案―合併比率の考え方―」に関するお知らせ」、「本日付公表の適時開示に関する補足説明資料」に拠る。