中国医薬産業の純利益は2010年1~5月で前期同期比+37%増と伸びています。中国の個人所得の増大に加え、医薬品の主要利用層である高齢者の拡大で、今後ますます業界の成長率が高くなっていくのではないかと予想されるところです。今回は面白い中国の医薬品関連企業をご紹介したいと思います。まずは東瑞製薬(2348)という企業です。江蘇省にある東瑞製薬は中間体、原料薬、最終製剤までを一貫して開発から販売している数少ない製薬企業の一つであり、売上規模的には中国本土、香港に上場するヘルスケアー業種の中では30~40位あたりという会社です。抗生物質の中でもセファロスポリン系と呼ばれる、中国で最もメジャーな分野の薬を主に扱っており、900トンもの原料薬から注射用パウダー剤まで展開しています。その他ジェネリック薬品も製造し、こちらは抗アレルギー薬品、心血管薬品、消化系統用薬品、泌尿系統用薬品と内分泌系統用薬品など多様な製品があります。昔から悪いところが見当たらない財務内容である一方、成長速度が緩やかな点にもの足りなさもあった企業でした。しかし中国の医薬品の需要増大という背景に加え、新しい生産ラインが加わってきており、業績拡大のスピードが拡大しつつあります。たとえば、2010年上半期の業績は前年同期比26.4%増、純利益は同71.2%増となっており、業界平均の約2倍大きく伸びたことになります。

次は利君国際(2005)です。利君国際は西安を拠点におく製薬会社で、主力製品は抗生剤でした。しかし、2007年に約5億香港ドルで輸液(点滴)薬製造を手がける石家荘四薬を買収してから、輸液事業が会社のもう一つの柱となりました。2010年上半期、利君国際の売上は前年同期比14%増、純利益は同25%増と安定的な業績成長を続けています。そのうち、輸液製品は売上の4割弱を占める一方で利益の6割強を占めています。もっとも現時点では前述の業界全体の成長率よりも低い伸び率でしかありません。しかし積極的な生産計画で今後業績成長のスピードは拡大するかもしれません。近年、輸液容器はガラスびんからプラスチックボトル、さらにソフトバッグへと次から次へと変わっています。中国ではプラスチックボトルやソフトバッグの普及率はまだ先進国の水準にまで達していませんので、これからはさらに加速してガラスびんに取って代わる傾向があります。利君国際はプラスチックボトルやソフトバッグの生産を拡大しています。ガラスびんの販売比率をすでに20%にまで下げており、先進国の水準に達しています。そして今後も輸液事業を拡大し続ける計画で、その生産容量を現在の5.1億ボトル/バッグから2010年末には8億ボトル/バッグに、さらに2012~2013年に10億ボトル/バッグにまで拡大させる計画です。

大手製薬会社の広州薬業(0874)も面白い会社です。2010年11月上旬に北京で開催された「中国知恵財産権フォーラム」では、中国本土の価値最大ブランドが発表されました。漢方ドリンクの「王老吉」は1080億元の評価で家電ブランドの海爾(ハイアール)を超え、中国本土の第一のブランドとなっています。王老吉は漢方薬成分を含有するお茶で、清涼作用があるため「涼茶」と呼ばれ、のぼせや炎症を予防できる機能性飲料として有名です。1828年に誕生し、182年という長い歴史があります。そして、広州薬業は王老吉の48.05%の株式を持っています。2009年、缶詰め王老吉涼茶の売上は160億元で、米国コカコーラの中国での売上である150億元を超え、中国で最も売れるソフトドリンクとなっています。しかし王老吉ブランドの最大株主である広州薬業は十分に利益を享受出来ていません。というのも同社は紙パック入りの王老吉涼茶の生産はしているのですが、最も売れている缶詰めの王老吉涼茶の経営権を香港の加多宝社に貸与しており、現在はブランド使用の認可費だけを徴収しています。王老吉涼を見ると、加多宝の缶詰め製品の160億元の売上に対して、広州薬業の紙パック入り製品の売上はわずか9億元しかありません。しかし、加多宝の経営権は2012年に期間満了になります。満期になったら、契約を継続する場合は、広州薬業はブランド使用の認可費を大幅に引き上げる可能性があり、さらに、経営権を回収する可能性もあります。ちなみに広州薬業の2009年の売上は38億元、純利益は2.15億元です。

このように中国の医薬品業界は面白い企業が出てきています。このほかにも抗生物質、抗ウィルス薬品に強く、240種類以上の製品ポートフォリオを持つ中堅医薬品企業である山東羅欣薬業(8058)や同じく抗生物質に強く、中間体、原料薬、最終製品までの一貫生産に強みを持つ聯邦制薬(3933)、使い捨て医療器具最大手の山東威高(1066)などがあります。