1999年に導入された歴史が浅い通貨

基軸通貨である米ドルに次いで取引量が多いのがユーロです。

国際決済銀行(BIS)が3年ごとに公表している外国為替市場データによると、2016年4月の外国為替全市場における1日当たりの平均取引量は約541兆円(1米ドル=106.83円(2016年4月末時点)で円換算。以下同様)でした。そのうちユーロ/米ドルの平均取引量は約125兆円で、およそ23%ものシェアを占めています。

基軸通貨である米ドルに次ぐ取引量を誇るユーロですが、その歴史は長くはありません。1993年11月に発足したEU(欧州連合)に加盟する28ヶ国のうち、現在19ヶ国でユーロは法定通貨として採用されていますが、ユーロ自体が導入されたのは1999年1月からです。したがって、ユーロは取引開始からまだ20年ほどしか経過していない歴史が浅い通貨といえます。

ユーロは現状、マイナススワップ

通貨ユーロは、ECB(欧州中央銀行)が通貨発行権を持っています。ECBは為替操作(外国為替オペレーション)の実施、加盟国の公的外貨準備の保持、そして政策金利の変更など重要な金融政策の決定を担っています。金融政策に関する理事会は、6週間に1度開催されますが、現在ECBはマイナス金利政策を導入しているため、FX取引においてユーロを買いで保有していると、スワップの支払い(※1)が発生します。

昨年までECBは2019年の利上げ開始を見込んでいましたが、6月の金融政策会合では利上げ時期は来年に延期され、ドラギ総裁は追加緩和も辞さないスタンスを明らかにしています。

(※1)「FXで利益を出すには!?<後編>」を参照

通常、高金利通貨を保有すると高いスワップポイントが付与されるため、投資家は「スワップポイント受け取りを目的」に高金利通貨を長期保有することがあります。しかし、ユーロは現状、マイナススワップであるため、ユーロを長期保有するとスワップポイントを支払うコストがかかってきます。

ユーロが大きく上昇しキャピタルゲインが見込めるなら、スワップポイント分のコストも気にならないところですが、欧州の景気後退リスクも強くユーロは長期下落トレンドが続いています。キャピタルゲインが見込みにくい相場環境であるなか、スワップコストがかさむユーロについては、旺盛な買いが入りにくい環境にあります。

金融政策を動かす経済指標

ユーロ圏は広く、各国のファンダメンタルズもまちまちですが、ユーロ圏経済をけん引しているのはドイツです。ユーロ圏の経済指標だけでなく、ドイツの経済指標もユーロの値動きが大きくなる材料になります。

ユーロ圏の主な経済指標

・ユーロ圏GDP
・ユーロ圏製造業PMI
・ユーロ圏失業率
・ユーロ圏消費者物価指数(HICP)
・ユーロ圏鉱工業生産

ドイツの主な経済指標

・ドイツGDP
・ZEW景況感調査指数
・ドイツ製造業PMI
・消費者物価指数(HICP)
・ドイツIFO景況感指数

ユーロの値動きが大きくなりやすい時間帯

前述した欧州、ドイツの経済指標が発表されるのは、欧州の昼間の時間帯、日本時間の15時~21時くらい(※2)です。この時間帯は欧州系の企業や金融機関などの実需筋が動き出すことに加え、経済指標の結果を受けて、投資家らがECBの金融政策の変化を推測して動き出すため、ユーロの値動きが大きくなります。

したがって、ユーロ/米ドルとユーロを中心とした通貨ペアであるユーロクロスを取引する際は、参加者が少ない東京時間よりも流動性が高まる欧州時間~NY時間にかけての時間帯の方が、トレンドが出やすいということを覚えておくといいでしょう。

(※2)為替が大きく動く時間帯は「FX取引時間帯:株式市場と為替市場の違い」を参照