株式投資で資産1億円超となった64歳の横田正さん(仮名)に、投資を始めたきっかけや投資の勉強の仕方、売買ルールなどについてお話を伺いました。
(聞き手:金野和子氏)
日本経済を勉強するために始めた株式投資
横田さんが投資を始めたのは、中学校の社会科の教師をしていた42歳の時でした。
「懇意にしていた中小企業の社長さんに、日本経済を勉強したかったら株がいいとすすめられたのがきっかけです」と横田さん。
当時は、資産を殖やしたい、というよりも日本経済の勉強のためという気持ちの方が強かったそうです。気になる最初の投資額は200万円。給料から天引き貯金していたお金を充てました。
「儲かったらクラウンでも乗ろうかと思って。ダメだったら軽自動車」という気楽なつもりでした。
横田さんが最初に購入した銘柄は「サガミホールディングス」(当時サガミチェーン)と「中部電力」に「トヨタ自動車」。
「サガミホールディングスは、近くに『和食麺処サガミ』があるので、株主優待目当てです。他にも、高配当だった中部電力、トヨタ自動車も買いました。これが出発点です」
これらの企業はお住まいの地域の地元企業であったこと、他にマネー雑誌なども参考にして「確実なところだ」と思って決めたそうです。
サガミホールディングス株は、現在でも保有中。「年3万円分の優待がもらえる。自分が食べたかったし、女房も納得するからね。親を連れていく時もあるよ」と横田さん。
早期退職して本格的に株式に取り組む
株式投資に本格的に取り組んだのは、3年前の58歳で早期退職した時。
「約2,000万円の退職金を全部使いました。基本的に株だけど、教え子が銀行や証券会社で働いているので、頼まれて投信や債券を買ったりしたこともありますよ」
株式を始める時も、退職金を使ったときも奥様の反対はなかったそうです。
「女房には話したけど、最初は勉強するためだったから何も言われていない。僕がいくら持っているかも知らないと思う。退職金もすぐ返すと言って株式に使ったけど、実際に利益が出たから返すことができているからね。すべてマネックスのおかげです」と笑う横田さん。
株式投資は、元々は近くの地場証券でスタートしました。
「地場証券は担当者がついているから、何かあったときは連絡してくる。当時、携帯を持っていなかったので、勤務先の学校に連絡が度々来ていた。“適当に”と返していたら、本当にとんでもないことになった。投資についての失敗といえば、あの頃担当者任せにしていたことだね」
そんなこともあってか、横田さんは2004年にメインの証券会社をマネックス証券の前身であるマネックス・ビーンズ証券に変えました。
「変えた理由は手数料が安かったことが大きいね。また、ネット証券は担当者がつかないので、自分で判断してできるところもよかった。それに、情報量も多くて株式投資にとても役立っています」
ネット証券の利便性を生かして、自宅ではパソコンで、外出先ではスマホで取引きしているそうです。
株式投資は生涯のライフワーク
現在の投資金額は1億円以上。
「これ以上儲けようと思っていないが、車とかパソコンとか、何か大きな買い物をするときに、その購入金額分を儲けようと目標を立ててやっています」
横田さんのように株式投資で成功するための売買ルールが気になる人も多いはず。
「僕の場合は、最初に銘柄ごとに2~3万円、あるいは10万円、50万円といった目標利益を決めておいて、それに達したら売ることにしています。ただ、もう少し上がりそうだなと判断すれば、目標利益を設定し直すことはありますよ。目標利益は長年のカンです。大体、日々見ているのでわかります」
これまで欲しいものは株の利益で買えているといううらやましい生活です。
とはいえ、下がることもあるはずです。
「下がっても気にしません。そのうち戻るだろうと思っているし、実際戻っているからね。基本的にプラスじゃないと売りません。ただ、他に有望な銘柄を見つけて、その時に損している銘柄を売ってその株の購入に充てることで、今までの損を取り戻せると思ったときに売ることはあるよ」
現在、約100銘柄を保有中で、このうち優待絡みは20銘柄程度。
日々、日本経済新聞にマネー雑誌、東洋経済やプレジデント、テレビ東京の「モーニングサテライト」や日経CNBCなどもチェックして、日本経済や株式の勉強は継続中。
これから投資を始める人には、「若い人にも、株式や日本経済のことを勉強することをおすすめします。最初は、個別の銘柄云々よりも、今後どういう分野が伸びるのかを見極めてから投資した方がいいね」とアドバイスしています。
横田さんにとって株式投資は「生涯のライフワークだね。ボケるまで続けていきますよ」と笑顔で話してくれました。
横田さんの経験談は、いかがでしたでしょうか?銘柄選びは知っている企業からというのは、投資初心者のセオリーですし、株価の上げ下げに一喜一憂しないようにご自身のルールは守りながら、時に次のために割り切って行動する。など、資産運用にあたっての基本的な心構えについて、独学ながら実行されているご様子でした。