10月19日夜、中国人民銀行(中央銀行)は、金融機関の1年物元建ての預金金利と貸出金利をそれぞれ0.25ポイント引き上げると発表しました。調整後の1年物貸出金利は5.31%から5.56%に、1年物預金金利は2.25%から2.50%になっています。利上げの背景には中国の景気が回復しつつあり、インフレ懸念も高まりつつあることがあります。中国中央銀行は、これまでにも流動性を抑えるために預金準備率の引き上げを数回行っていました。しかし、利上げの実施については2007年12月以降で初めてです。なお、今回の利上げは普通預金を対象にしておらず、0.25ポイントの引き上げ幅も大きくないため、市場にはそれほど大きな影響を与えないと予想されています。ただ、一回の利上げではインフレを抑えるのに十分な効果がないと考えられるため、今後も利上げが継続される可能性があり注意が必要です。
10月21日に発表された第3四半期の中国マクロ経済データは強い調子を保ったままです。中国国家統計局が2010年7-9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比9.6%増となりました。伸び率は4-6月期の10.3%を下回っているもののアナリスト予想の9.5%増を若干上回っています。そして、インフレも高まっています。9月のCPI上昇率は8月の上昇率3.5%を上回る3.6%増となっています。資産価格と物価の上昇懸念が強まる中、経済の過熱を防ぎ、長期的かつ安定的な成長を狙う中国政府は利上げという強力な措置を実施したわけです。利上げの影響を受け、中国本土市場と香港市場の不動産銘柄は全体的に下落しています。貸出預金の上昇で、不動産企業の融資コストが拡大し、個人の住宅投資コストも上昇するため、投資意欲が抑えられ、住宅の販売が減少する可能性があります。例えば、20年間の100万元の住宅ローンで試算すると、利上げ後の毎月の返済額は115.6元増加します。
ただ、過去の本土A株市場の金利引き上げ後の株価推移を参考にすると、金利上昇の翌日は寄りは大きく下げるのですが、その後、金利上昇はしばらく起こらないだろうという楽観的な見方が広がり、それでアク抜けして後場上昇し、その後も上昇していくというパターンが多いです。金利上昇は経済の勢いが強いからこそ行われるのであって、長期的に見れば、最初の金利上昇はその後の株価上昇の号砲となることが多いものです。実際のところ、利上げ直後の株価の動きは今回も同じでした。そして、利上げは、上昇期待高まる人民元への投資を一層加速させるものですので、短期的には相場にマイナスですが、長期ではプラスに働く効果もあります。