「老後資金は夫婦で1億円必要」の根拠
日本人の平均寿命は2017年時点で男性81.09歳、女性87.26歳(厚生労働省「簡易生命表」)。これは若い頃に亡くなった人も含めての数字です。
医学の発達により今後も現状のペース(男性は10年で1.8歳、女性は同1.7歳)で寿命が延びていくとすると、1979年生まれの男性は2人に1人が93歳、1989年生まれの男性は同じく2人に1人が95歳まで生きることになります。女性にいたっては1979年生まれの半数は100歳時点で生存している可能性が高いわけで、最近よく耳にする「人生100年時代」は決して絵空事ではないのです。
では、人生100年を生き抜くための老後資金はどれだけ用意しておく必要があるのでしょうか。現在40代以下の人が老後を迎える頃、会社員の定年は65歳(ひょっとしたら70歳まで延長されているかもしれません)。その時点で100歳までに35年もあります。
老後の生活費を試算する際の目安とされるのが、総務省が発表している「家計調査」です。2人以上の世帯の1ヶ月の平均支出は65~69歳が28万1053円、70~74歳が25万8425円、75~79歳が23万9587円、80~84歳が20万5404円、85歳以上が20万6525円(2018年)。同い年の夫婦が共に100歳の誕生日まで生きると仮定して、この数字を基に計算すると35年間の生活費の合計は9624万2640円に上ります。
巷で言われる「老後資金は夫婦で1億円必要」の根拠はここにあるわけです。
リタイア直前になると老後資金への打つ手が限られる
しかし、これはあくまで生活費ベースの話で、リタイアした後は夫婦で海外旅行に出かけたりスポーツを楽しんだりしたい、あるいは、自宅をリフォームしたり高級老人ホームに入りたいと考えているのであれば、別途資金を用意しておかなければなりません。
高齢になればなるほど、思わぬ病気やケガで医療費が予想以上に膨らんでしまうこともあります。厚生労働省の調査によると国民1人当たりの生涯医療費は約2700万円で、そのうちの6割が65歳以降にかかったものです(ただし、医療費の全額を支払う必要はなく、健康保険の診療であれば74歳までは医療費の3割、75歳以降は1割が自己負担)。
そう考えると、人生100年時代に必要な老後のお金は「夫婦で1億円プラスアルファ」ということになります。といっても、1億円をすべて自前で用意しなければならないわけではありません。会社員なら定年退職した時点で退職金が受け取れますし、国や会社の年金制度もあります。問題は退職金や年金で1億円プラスアルファのうちどれくらいがカバーできるのか、です。
リタイア直前になって退職金や年金だけではどうにもならないことを知っても、打つ手は限られます。若いうちから国や会社の制度をきちんと理解した上で、自分が将来もらえる金額を予測し、足りない分をどう貯めていくかを考えていく必要があります。