米中通商問題の再燃で中国株は大幅に下落
4月下旬~5月上旬の中国株は米中通商問題の再燃で大幅下落となりました。香港ハンセン指数の動きを見ると、5月3日(金)までは年初来高値近辺での株価推移でした。
しかし、5月6日(月)にトランプ大統領が米中貿易協議の進展の遅さを理由に、中国からの輸入品2000億ドル相当に対する関税率を現行の10%から25%へと引き上げるとツイッターで発言。この日の香港メインボードの売買代金は前営業日比2倍超という大商いとなり、香港ハンセン指数は50日移動平均線を下に突き抜けてしまいました。
トランプ大統領のツイートが脅しや交渉材料に過ぎない可能性もあったことで5月7日(火)は小幅に反発したのですが、5月8日(水)に再び、前日比で出来高を増して反落。さらに5月9日(木)も一段と出来高を増やして大きな陰線をつけました。
5月10日(金)は追加関税が発動されたものの、中国本土市場が大幅反発したこともあり、小幅に上昇しています。先週末の米国株の状況から、今週は反発でスタートする可能性があります。しかし、出来高を拡大しながら大きく調整する株価の流れは、まさに下落トレンド時の特徴であり、テクニカル的にはしばらくは軟調な推移になることが示唆されているように見えます。
ファンダメンタル的にも、もちろん米中通商協議が良い方向に急転換すれば株価は急反発となる可能性がありますが、解決までにはもうしばらく時間がかかりそうで、上昇トレンドに再び反転するキッカケを掴みにくそうです。
時間はかかりそうだがいずれは解決か!?
ところで、どうして急にこのような状況になってしまったのか?推測ではありますが、中国政府の読み間違いが背景にあるように思います。まず、米国の経済指標を見るとISM製造業景況指数やISM非製造業景況指数など、一部にやや経済の成長がスローダウンしている傾向が見受けられます。
その一方で、中国経済は昨年末からの大規模減税・手数料削減などの財政政策によって底打ちをする基調にありました。
さらに中国が推し進める(そして米国が批判している)巨大経済圏構想「一帯一路」には、3月23日にイタリアが先進7ヶ国(G7)としては初めて覚書を交わすなど、既に126ヶ国が覚書などを交わしています。また、4月末に行われた「一帯一路」国際フォーラムには37ヶ国の首脳が出席するなど盛況でした。
このような状況の中で中国指導部は、来年に大統領選挙を控え、景気と株価の落ち込みを避けたいと見えるトランプ政権に対して、多少、強気の要求を出しても、米国が譲歩してくる可能性があるのではないかと見ていたようです。
これまで中国が譲歩してきた、国内産業への補助金の削減・中止方針や中国進出認可と引き換えに海外企業に技術提供を求めるといった、知的財産権の問題に係る法改正方針についてやはり譲れないとの態度をとって、米国側がどう出てくるか様子を見たのではないかと思います。
結果的にそれがトランプ大統領の逆鱗に触れ、追加関税の話になったのではないでしょうか。このように考えていくと、今回の問題は中国が絶対に譲歩できないラインを新たに求められている訳ではなく、もともと譲歩した約束だったラインを再び元に戻すように求められているイメージと思います。
また、中国もこれ以上の景気減速は避けたいところです。時間はかかるかもしれませんが、いずれ双方のメンツを保ちつつ、最終的に合意することは可能かもしれません。
セルインメイの格言通り、5月に入ってから株価が下落基調になってしまいました。5月~10月の期間は株価が上昇しにくい傾向があり、米中通商協議が難航するようなニュースが出てくれば株価は一段安となる場面もあろうかと思います。
しかし、最終的に米中通商問題が解決すれば、株価は再び上昇トレンドに戻れる可能性があると考えられ、今後、急落が発生したタイミングはチャンスと捉えることもできるでしょう。