・4月初頭に急騰して以来、ビットコインは上昇を続けている。4/24時点での年初来の上昇率は、53.8%に上った。これは、特殊な需給要因で上昇した原油すら抑えて、主な金融資産の中で最高となっている。
・当初はエイプリルフール説も囁かれたが、3月後半から先物・現物ともに取引量が上昇しており、それだけとは考えられない。3月のFOMCで利上げが見送られたことに加え、機関投資家や業界の活発化が影響している模様だ。
・一方、価格は、取引量ほどには上昇していない。過去に含み損を抱えた投資家の売りが多いためとみられ、これらが一服すれば、もう少し上値が追えそうだ。完全回復期待は時期尚早だが、過去2回の暴落の契機となった不正取引については対策が充実しており、機関投資家の認識も広がりつつある。案外早い回復が見える可能性もある。
ビットコインの上昇続く:年初来+53.8%で主な金融資産中最高の上昇率
4/2に突然急騰し始めたビットコインが62万円台を回復し堅調に推移している(図表1-1)。年初来の上昇率は53.8%と、米国のイラン産原油輸入禁止等の特殊要因があった原油を抑え、主な金融資産の中でトップとなっている(図表1-2)。
上昇が始まった当初は、エイプリルフールのフェイクニュースの影響や、数人の大口投資家の買いに過ぎないという説が有力だった。しかし、急騰前の3月後半から既に先物・現物ともに取引量が増加しており(図表2)、幅広いトレードが行われている模様である。
取引量増加のタイミングを考えると、やはり、3月20日の米金融政策決定会合FOMCで利上げが見送られ、市場がリスクオンに再度舵を切ったことが大きかったと考えられる。
さらに、業界の動きが活発化していることも、上昇トレンドの持続に一役買っている。
例えば、世界有数の運用会社フィデリティが仮想通貨カストディサービスを開始したことや(3/8)、インベスコがブロックチェーンETFを開始したこと(3/10)、Amazonでビットコイン払いが可能になるという報道(3/22)、NY証券取引所のグループ会社であるBakktがNY州のライセンスで先物取引開始を模索しているとの報道(4/18)などが好感されている模様だ。
日本でも、金融庁が楽天ウォレットとディーカレットを新たに仮想通貨交換業者として登録、同日、マネーパートナーズグループが仮想通貨運営の子会社を設立すると発表した(3/25)。さらにこのディーカレットが、SUICAに仮想通貨をチャージできるサービスを検討すると報じられたことも最近の中では大きなニュースとなった。
“スピード違反”感は否めないが、売り圧力が沈静化するならもう一段の上昇も
実は、ビットコイン価格は、取引量ほどには上昇していない(前掲図表2)。今回の価格持ち直しを機に、過去に抱えた含み損を整理する投資家の売り圧力が大きいためと考えられる。これらが一服すれば、もう少し上値を追える可能性もあるだろう。
では、過去のような暴落はないだろうか。6月のG20では仮想通貨規制の議論も想定されている。米当局による仮想通貨ETFの認可も5月以降に延期されている。このように懸念材料も多い上、ユースケースはまださほど広がっていない。17年のような急上昇を望むのは時期尚早だろう。
一方、図表3の通り、Mt.ゴックス後の価格暴落からの回復までの軌跡を今回を比べると、このところ若干回復速度が速いものの、底割れリスクは限定的と考えられる。17年末の最高値から、18年末に記録した底値にかけての下落率は約80%と、Mt.ゴックス後の下値と同水準である。
また、過去2回の市場暴落の契機となった不正取引については、ウォレット管理の徹底や、検知システムの改善など、対策が充実している。機関投資家の仮想通貨への認知も17年当時よりは広がっている。金融緩和も当面続くとみられる。米国市場の動き次第では、案外早い回復が見込める可能性もあるだろう(過去のイベントと価格動向を<参考>図表4に記載)。