今週の焦点は以下の3点。
①15~16日にワシントンで開く日米の物品貿易協定(TAG)交渉の行方
②17日発表の中国・主要経済指標
③米国の企業決算
物品貿易協定交渉での懸案はやはり為替条項だ。日本経済新聞・電子版は、14日、以下のように報じた。<ムニューシン米財務長官は13日、日米が15日から始める貿易協定交渉で「為替も議題となり、協定には通貨切り下げを自制する為替条項を含めることになる」と述べた。法的拘束力のある通商協定に為替条項が盛り込まれれば、日本側の円売り介入などが制限される可能性がある。>
メディアも市場も為替条項で大騒ぎだが、実質的にそんなに不利益なことではない。日本は東日本大震災直後のような特殊な状況を除いては介入などしていないし、そもそも介入というのは対症療法に過ぎず介入で為替レートの基調を変えられると考える当局者はおそらくひとりもいないだろう。だから為替条項で介入ができなくなってもなんら困らない。
金融緩和はどうか。日銀は、(表向きには)円安誘導のために金融緩和しているのではないと突っぱねれば済むことだ。実際に日銀が異次元緩和を開始した以降も何度も円高局面はあった。そもそも為替条項によって一国の金融政策を変更させることはできない。為替条項で競争的な通貨切り下げ禁止を謳ったところで具体的に何をしてはいけない、と規定できるものではない。「通貨安につながる金融緩和を禁止」などと書けるわけではないのだ。
但し、それこそ日米関係を「忖度」して金融緩和がやりづらくなる面はあるかもしれない。そうであるなら、ただでさえ手詰まり感の強い日銀の次の一手はETF購入の増額となろう。株式市場にとっては悪い話ではない。
17日には中国で、3月の都市部固定資産投資や鉱工業生産、小売売上高と1~3月期のGDPの発表がある。このところの中国の景気指標は持ち直しているものが多い。先週金曜日に発表された3月の貿易統計でも輸出の伸びが市場予想を大幅に上回った。中国人民銀行が発表した3月の人民建て銀行融資額も大幅に伸びた。今週の統計でも中国景気の回復基調が続いているか確認したい。
今週米国ではシティグループ、ゴールドマン・サックス・グループ、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーなど金融を中心に決算発表がある。先週金曜日、JPモルガン・チェースが発表した1~3月期決算は純金利収入が堅調に伸び、純利益は前年同期比5%増えた。JPの市場予想を上回る増収増益決算を受けて金融株が軒並み買われ、米国株市場は大幅高となった。S&P500は2900ポイント台に乗せ、2930ポイントの史上最高値更新が視野に入った。
BREXITは延期され、中国景気は回復が鮮明となり、FRBは利上げを停止、それでも米国金融機関の業績は堅調 ― これでリスクオンにならないほうがおかしい。ドル円はNY市場で112円をつけた。シカゴの日経平均先物も2万2000円を超えて引けた。週明けの東京市場でも日経平均は2万2000円の大台を超えるだろう。但し、先週同様、週初に2万2000円をつけても売りに押される展開も想定される。2万2000円の大台回復とその水準を維持できるかが、今週4番目の焦点である。
予想レンジは2万1800~2万2300円とする。