国立美術館級の作品が高値で取引される

当行は香港にて年2回投資フォーラムを開催して、様々な投資に関わるお話を1日半8セッションに分けてご提供している。11月に開催した当フォーラムメニューに国際的なオークションハウスであるクリスティーズ(Christie’s)の方に講演していただいた。

その方に「ちょうどその前後にChristie’s Hong Kong Autumn Auctionsを開催しているので、ぜひ」とお誘いを受けて、後学のために見学させていただくことに。

驚いたのが会場の規模の大きさとその展示品のあまりに多様なことである。香港コンベンションセンターの3階の一角を占めているのだが、行けども行けども、オークションに出品される品々が展示されている。

筆者も世界最大の現代アート展覧会Art Basel香港を見ているが、まるでオークション会場はArt Basel会場にいるのではと錯覚するほど巨大である。そしてその展示品も多種多様で国立美術館級であり、中国古代絵画、ヴァン・ゴッホそして草間彌生さんの作品と続く。

そして絵画の隣りのバッグコーナーでは、アジア最大のエルメス香港店でも見かけることがないケリーバッグが数多く展示されている。そしてその横でクラシック時計が展示され、さらに年代物のワインのコレクションのオークションが開催されている。そして当然ながら世界の豪華不動産も同じ場所で販売されている。ともかくなんでもありなのである。

クリスティーズ香港のWrap Upレポートによると、今回の開催期間での売り上げは、27.5億香港ドル(日本円で400億円相当)で、しかもクリスティーズのアジア過去最高値4.63億香港ドル(日本円で67億円相当)で中国絵画が取引されている。なんとも景気の良い話だ。

前述のケリーバッグは、最高値162.5万香港ドル(日本円で2,400万円相当)で取引され、ケリーバッグ全体で6億円分相当が売れていったということなので、ここでも溜息である。この季節に開催されるということは、香港在住または香港にやってくる富豪たちが、クリスマスプレゼント用に落札しているのだろうかと思わず勘繰りたくなる。

時代の流れを読み、時代の半歩先を行くビジネスとは?

しかしよく考えてみれば、全てが誰かの手を経て、クリスティーズのオークションに掛かるのである。つまり巨大なる中古品市場なのだ。名家の主人が亡くなると、葬儀屋さんの次にやってくるのは、オークションハウスだと言われる。オークションハウスも、やはり仕入れが命なのだろう。

歴史をひも解くと国際的なオークションハウスのクリスティーズもサザビーズ(Sotheby’s)も両社ともに、1750年前後に開業している。それは奇しくもフランス啓蒙思想が興隆し、絶対王政が批判され18世紀末のフランス革命勃発と貴族の称号が廃止された世相の時。つまり、貴族時代が終焉し来たる19世紀の近代社会に向けて時代の変革期なのだ。そんな時代に、貴族保有の「お宝」が流出する過程で、オークションという形で事業が一気に拡大したのでは?と勝手に想像した。

今で言えば、クリスティーズもサザビーズもヤフオクやメルカリの先達なのかもしれない。常に時代の流れを読み、時代の半歩先を行く事業を手がけることとは? 膨大なる展示品に囲まれ、ふとビジネス機会とは何かを考えさせられた。

Merry Christmas from HKG.