2010年第1四半期、中国の国内旅客数は前年同期比8%増の6.1億人、国内旅行の売上総額は20%増の3430億元です。そして、1~4月、入国旅客の人数は8%増の1781万人、海外旅行の中国旅客数は14.1%増の1811万人となり、中国旅行業はすでに景気後退の影響から回復しています。国連世界旅行組織の予測によると、2010年末時点で、中国はスペインに取って代わって世界2位の人気旅行国となり、2020年にはフランスを超え、世界で最も人気の旅行国になる可能性もあるとのことです。
多くの国では可処分所得が先進国並みに増加する段階で、医療、保険、旅行、教育、娯楽費は特に上昇していきます。耐久消費材への消費は成長が進むほど徐々に伸びが鈍化していく一方、サービス関連の消費は年収増加により加速度的に上昇していきます。これらは収入が低い時代には後回しにされて使われなかった分野だけに、収入の増加とともに弾力的に成長していくのです。2009年の国慶節期間(10月の長期連休)での旅行者数が前年比13%増の2億人となりました。これは、ほぼ現在の中国ミドルクラス層の人口と同じ程度です。そしてミドルクラス層は2020年には5億人(かつてどこの国にも存在しなかった数)になると予想されており、それだけ旅行者数も多くなると予想できます。
中国国家旅行局(日本政府観光局に当たる)は、すでに今後5年間の旅行産業の発展目標を立てています。具体的には、2015年、中国の年間国内旅行者数は33億人になり、年間平均10%増加ずつ増加させていく計画です。そして、旅行業の売上は今後5年間で平均年間12%成長し、GDPの4.5%を占めることになるとの計画。そして、これらの目標を達成するために、関連政策が次々と発表される予定です。2009年末、中国国務院はすでに「旅行業の発展促進に関する意見」を発表しました。2010年、「旅行法」と「国民旅行余暇綱領」も制定されており、全国の25地域では、旅行発展に関する大型プロジェクトが計画されています。
このように、旅行関連企業は長期的な成長力が高いため、今後引き続き注目していきたいところです。日本人の投資家が投資できる観光関連銘柄は、中国人のみが買うことのできる本土A株に比べると少ないですが、それでも選択肢は多数あります。黄山(中国の有名な景勝地)の運営を一手に手がける黄山旅行(上海B株、証券コード:900942)、上海最大の旅行会社である上海錦江国際旅遊(上海B株、証券コード:900929)や、南方航空(香港H株、証券コード:1055)や東方航空(香港H株、証券コード:0670)、国際航空(香港H株、証券コード:0753)といった航空銘柄、米国ADRに目を向ければビジネスホテルチェーン最大手のホームインズ(米国ADR、証券コード:HMIN)やオンライン旅行予約最大手のシートリップ(米国ADR、証券コード:CTRP)などがあります。