PORTFOLIO OVERVIEW(30 MAY 2017)
今週のFX-1ストラテジーは前週とほぼ同じサイズの米ドル・ショートを維持した。米国の成長は他国に比べて緩慢な状況が続いている。米ドルはバリュエーションの観点から割高であり、ポートフォリオではこの要因によって米ドルがネット・ショートとなっている。
今週はロング/ショートに関する変更はなかった。ユーロはもはや割安ではない。北欧通貨はバリューション面から買いである。日本円の買いポジションは過去2週間で徐々に増加してきている。英ポンドは政治リスクから売られ過ぎと思われる。
もっとも大きなショートはスイスフランとニュージーランド・ドルである。スイスフランは割高で、成長も緩やかだ。ニュージーランド゙・ドルの問題は成長が弱い点である。
ポートフォリオはいまだにアクティブ・キャリー・ポジションを有していないが、それは各国間の金利差がじゅうぶんに大きく開かず、金利のモメンタムも高くないためである。次の大きなイベントはFOMCとECB理事会だ。米ドルは、年初からこれまでのところの堅調な成長とFEDによる利上げの恩恵に浴していない。なぜならグローバルで成長が高まってきており、もはやFEDだけが絶対的なプレーヤーではなくなってきたからである。特にユーロ圏の成長とインフレの回復は、「テーパリング」の前触れと見做し得るようなECB声明文の変更につながる可能性がある。しかし、前回3月のECBスタッフ見通しが出された時点からインフレの進行が緩やかだったこともあって、声明文に変更があったとしても限定的なものにとどまるとわれわれは考える。
DeepMacro
DeepMacro社は、ビッグデータ技術を利用して、自動的かつリアルタイムにグローバルなマクロ経済を観察・分析し、これを基にマーケットの分析を行う米国のリサーチ会社です。詳しくは、こちらをご覧ください。
DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルの説明
概要
DeepMacro FX-1 Strategy 通貨モデルは、DeepMacro 社のグローバル・マクロ・システムに基づき、G10通貨についてシステマティックなポートフォリオ戦略を提供するものです。通貨の変動を説明する様々な要因を捉え、DeepMacro 社のリサーチ・システムの膨大なデータを、流動性が高く割安なポートフォリオに変換します。
キーファクター:
成長要因:
強い景気サイクルにある通貨を買い、弱い景気サイクルにある通貨を売ります。この判断は別のモデル体系であるDeepMacro 社の「Growth Factor」に基づきます。「Growth Factor」は主要国のビッグデータを含む経済成長に関するリアルタイム・インディケーターです。
キャリー:
高いキャリーの通貨を買い、低いキャリーの通貨を売ります。しかし、高キャリーは高リスクでもあります。したがって、リスクに見合うだけのキャリーが得られる場合のみ、このファクターによる投資判断を行います。
バリュエーション:
割安な通貨を買い、割高な通貨を売ります。経済理論では、高い生産性の伸び、高い輸出価格、大きな経常黒字の通貨は高くなることが示されています。このモデルのバリュエーション・ファクターはこれらの要因にもとづき割高・割安の判断をおこないます。
グローバル・リスク:
投資家のリスク回避姿勢が強まった時には、いわゆる「セイフ・ヘイブン(安全な寄港地)」通貨を買います。DeepMacro社では金融市場の価格に基づいて市場のリスク選好度を見積もっており、「グローバル・リスク・インディケーター(GRI)」を算出しています。GRIが点灯した場合、モデルは日本円、スイスフラン、米ドルなどへの買いを指示します。
ポジション調整:
モデルは対米ドルで9通貨のポジションを表示します。モデルは各通貨への集中度制限などリスク管理のルールを適用し、最適化を行った結果としてポートフォリオを構築します。
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チーフ・ストラテジスト広木 隆の<今週の相場展望>とコラム「新潮流」とチーフ・アナリスト大槻 奈那が金融市場でのさまざまな出来事を女性目線で発信する「アナリスト夜話」などを毎週原則月曜日に配信します。メールマガジンのご登録はこちらから