今週発表された日銀の企業短期経済観測調査(短観・6月調査)で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)が3月調査に続いて2期連続で悪化した。2期連続の悪化は2012年12月以来5年半ぶり。米国発の通商問題や資源価格上昇、人手不足などが企業のマインドを悪化させている。2012年12月以来5年半ぶりの悪化ということは、「いざなぎ景気」を抜いてすでに戦後2番目に長い拡張期にある今回の景気拡大も、そろそろ終わりか?という雰囲気になるが、そうはならないだろう。まず設備投資が記録的な伸びを見せていることがひとつ。そして、もうひとつが「先行き」の見通しが「横ばい」になっていることだ。(グラフで棒グラフが下向きに出ているのは「先行き」がマイナス。横ばいだと差がゼロなので棒グラフが表示されない)

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短観は足元の景況感に加えて3カ月先の「先行き」についても尋ねる。通常は先行きに対して慎重になるもの。ましてや貿易戦争が懸念されているならなおさらだ。ところが、そうなっていない。過去、足元の業況と先行きの差を見ると、「横ばい」を経てその後景況感は持ち直す。「もうこれ以上悪くならない」という感覚を企業のひとたちが持つステージがあるということだ。学者やエコノミストではなく実際にビジネスの現場にいるひとの景況感は信頼できる。

アナリストの業績見通しも下方修正が一巡している。リビジョン・インデックスはずっと低下が続いていたが、足元は下げ止まりから反転上昇している。上方修正と下方修正がほぼ拮抗している。足元の110円台で推移しているドル円など為替ひとつとっても業績の不安材料は織り込んだということだろう。

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このように企業の景況感やアナリストの業績予想は悪化も一巡した感がある。

先行して悪材料を織り込んできたという意味では、米中の追加関税発動(タリフ・オン)もそうであろう。米国政府が6日付で340億米ドル規模の中国製品に25%の追加関税をかける制裁措置を発動した。それを受けて中国商務部は「国家の核心的利益と人民群衆の利益を守るため、反撃せざるを得ない」と表明した。報復合戦の様相だが、市場の反応は限定的だ。むしろ材料出尽くしでアク抜け感すらある。今日の上昇は週末の手仕舞いもあって買戻し主体だが、当面の底にはなるだろう。上述の通り、ファンダメンタルズの悪化は止まっていたのに相場だけが(もっと言えば日本株相場だけが - 為替などはリスクオフになっていない)下げ続けていた。明らかに行き過ぎだった。

さて、小売り各社の決算発表が佳境を迎えているが、良品計画の下げがきつい。決算発表を受けて大幅安となった昨日に続いて今日も5%近い下げ(14時現在)で年初来安値をつけた。良品計画が大幅反落し、一時、前日比5000円(13.1%)安の3万3250円まで下げた。同社が4日発表した2018年3~5月期の連結決算は、主力の国内事業が好調で純利益が95億円と前年同期に比べ22%増えた。この業績で、どうしてここまで売られるのか理解できない。

市場では中国や台湾での足元の販売動向を懸念する声が出ており、嫌気されたというが、まったくナンセンスだ。良品計画が売っているのは「センス」である。それは豊かになっていく中国の中間層がいちばん欲しいもので、かつ技術と違って自分たちでは一朝一夕に作ることができないものだ。ビジネスモデルやテクノロジーはカネで買えても、センスは買えない。良品計画の優位性はまだ健在である。

良品計画の売られ方もひどいが、さらに輪をかけてひどいのがニトリHDだ。ニトリHDは6月下旬まで右肩上がりで推移し連日高値更新が続いていた。しかし、6月22日に発表した6月の既存店売上高が4.5%のマイナスと、16年12月以来の落ち込み幅になったことが嫌気され急落。その後発表した2018年3~5月期の決算で、営業利益は前年同期比18%増の304億円となった。家具や生活雑貨の販売が好調で、市場予想平均も上回り同期間では2年ぶりの増益。このような良好な決算を発表しても市場では「材料出尽くし」と見られ下げ止まらない。

実際には6月の月次販売データで売られて以来、下げに勢いがついてしまったというのが正直なところだろう。しかし、これもどうして押し目買いや逆張りが入ってこないのか理解不能である。昨年より梅雨入りが早く、雨や気温の低い日が多かったため夏物販売の出足が鈍かったことが6月の販売不振の原因なら、梅雨明けがかつてないほど早いこの7月は反動で夏物が売れるだろう。7月の販売データが発表されれば、これまでの下げが急ピッチだったこともあって、相当程度の反発が期待できると思う。

今日はポケモンGo相場のスタートから2周年。その日に任天堂は安値更新だ。今日のところ日経平均は反発しているが、売買代金トップの任天堂が下げ止まらないことに象徴されるように、相場は基本的に弱い。しかし、見方を変えれば、これまで押し目を拾えなかった強い株 - 資生堂(4911)、リクルート(6098)、OLC(4661)などを安く拾えるチャンスでもある。無論、良品計画(7453)、ニトリ(9843)も、である。